さて、今日のこの時間は、少し変わったお話をご紹介いたしましょう。
昔の本「子不語」から「酒泥棒」、そして「酔茶志怪」から「踏みつけたもの」です。
最初は「子不語」から「酒泥棒」です。
「酒泥棒」
物事を書き記す役人、つまり、史官の長であった熊本が、都のある横丁で家を借りて住んでいた。隣は学者の荘令の屋敷であり、二人はこれまで気があい仲が良いので、常に酒を酌み交わしては詩を詠んだりしていた。
ある年の8月の夜、荘令が屋敷の庭で月をめでようと熊本を呼び、酒を飲みながら話にふけっていた。すると、屋敷のものが来て大事な用事で上司が役所でまっているという。
「っとにもう。こんなときに!仕方あるまい。貴公は待っていてくれ」と言い残し、荘令は屋敷を出て行った。
こちら熊本、では一人で飲んで待つかと、徳利から杯に酒を注いでから、月を眺めた後、杯を手にしたところ、酒がなくなっている。
「うん?なんだ?まだ飲み始めたばかりだぞ?これしきで酔うはずがない。おかしいな?」と怪訝な顔して、徳利を手に酒を注き、杯をゆっくりと机に置いた。すると一本の青い手が机の下から伸びてきて、杯を掴もうとする。これを見た熊本はギョッとなって立ったので、机の下から全身青色の化け物が出てきた。熊本はおもわず「誰かおらんか!」と叫んだので、数人の屋敷の者がやってきた。ところが、化け物はすぐに姿を消していたので、屋敷の者たちは人騒がしなことだと小さな声で言いながら中に入っていった。
しばらくして主の荘令が戻ってきた。そこで熊本が今さっきのことを話すと、荘令は半信半疑。しばらくして、荘令は、この親友ともいえる熊本をからかってみたくなった。
「熊本どの、どうじゃ?この化け物が出る庭の部屋に泊まってみる勇気はござるか?」
「うん?なんと申される!?」
「いやなら、やめときなされ」
「ふん!貴公はわしを臆病者とおもっておるな!」
「そうではない。さあ、飲みなおそうではないか」
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