これに熊本、氷水をぶっ掛けられたかのように体が震えたが、化け物はそのまましばらく熊本を睨んでいた。やがて「ひひひひ!」と笑うと、のそりのそりと熊本に近づいてきたので、我に返った熊本、「ワーッ」と叫んだあと、握っている剣を目をつぶって力いっぱい振り下ろした!すると「バサッ」という音がした。そして熊本は自分がやられていないと気付き目を開けた。見ると化け物の腕が切り落とされている。
「ガーッ」と叫んだ化け物は、くるりと向きを変え、窓から庭へ逃げ出した。
「逃がしてはならん」とどこからか勇気が出てきた熊本は、部屋の戸を開けて後を追った。そして月の光に照らされた化け物は。庭の隅の方に植えてある桜桃の樹のあたりに逃げ込むのが見えた。
「逃がさんぞ!」と熊本が樹のそばまで走って来たが、そのときには化け物の姿はどこにもなかった。しかし、熊本は安心できないので、剣を握ったまましばらくそのあたりをうろうろしていたが見つからない。仕方がないので、熊本はかの部屋に帰り、冷たくなったお茶をがぶがぶ飲んだ。すると疲れがいっぺん出できて頭がふらつく。
「これはいかんわい」と熊本は、床に倒れるように横になり、すぐにいびきをかき始めたわい!
さて、朝が来た。早起きした荘令が熊本の様子を見に着たが、庭の部屋に入ろうとして窓が壊れていることに気付いた。そして窓には血がべっとり付いているのを見てあわてた荘令、部屋の戸を開けて中に入ると、なんと熊本が床の上でいびきをかいて寝ているではないか。
「これは・・?熊本どの!熊本どの!これはいったいどうしたのでござるか!」
これに熊本は目が醒め、さっそく昨夜起きたことを荘令に話す。
「なんじゃと?まことでござるか?」
「わしが何時貴公にうそをついた?」
「そうじゃな。それに窓には血が付いているからのう」
「え?窓に血が?!」
これには熊本も驚き、二人はさっそく庭の桜桃の樹のそばまで来た。
そして細かく見ると、桜桃の樹には血が付いており、それに酒のにおいがする。そこで荘令は屋敷のものにこの桜桃の樹を切り倒させ、焼いてしまったと!うん!
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