今度は、「蛇の仇討ち」です。
益州の邛(きょう)県の町境に貧しい一人ぐらしのばあさんがいた。
で、ばあさんが食事のときに、どうしたことかいつも頭にかんむり型のこぶがついた小さな蛇が、どこからかばあさんのそばにいつも出てくるので、この蛇を哀れんだばあさんは、粗末な食べ物だが、それを分けて蛇に与えた。こうしてこの蛇は、徐々に大きくなり、後には9尺あまりにもなった。
さて、この県の役所の馬が、どうしたことかある日、大きな蛇に呑み込まれてしまった。さあ大変。怒った県令は下の者に調べさせ、馬を飲み込んだ蛇が町境にすむこのばあさんが餌をやっている蛇だということを知った。そこで、自ら下のものを率いてばあさんの家にきた。
「おい!ばあさん!県の役所の馬がお前が養っている蛇に呑まれたことを知っておるか!」
これを聞いたばあさんは、びっくり。
「へえ?ほんとうでございますか?まったく知りませんで・・」
「知らぬでは許さんぞ!」
「そんな・・」
「その蛇はどこにおる」
「え?蛇なら私の床の下におると思いますが・・」
「床の下?ふん!ものども!床の下を掘って憎らしき蛇を召し捕らえよ!」
こうして下役人どもが、家の中に入り、ばあさんの床の下を掘り始めた。しかし、いくら掘っても出てこない。そこで県令はばあさんがうそをついたと決め付け、なんとばあさんを縛り、役所の牢獄にぶち込んでしまった。もちろん、ばあさんは、このごろは蛇が床の下から出てくるのでうそを言った覚えはなく、役所での取調べでも、自分はうそはついていないと言い張るものだから、怒った県令は、なんとばあさんを縛り首にしてしまったわい。
さて、その日の晩、県令の夢の中に若い男が現れ、きつい顔をして「お前は罪のない私の母をどうして殺したのだ。いいか!おぼえていろよ!この敵はきっと討って見せるからな!」という。
こちら県令、こんな詰らん夢が何だと気にしなかったが、このときから町では、なんと大雨が降り、大風が吹く音がいつも聞こえてくるようになった。
これに県令は怪訝な顔をしたが、落ち着いたふりをして、驚き慌て始めた下役人たちを叱り付け、また、下役人たちを出して慌てている町人たちをなだめにいかせた。しかし、町人たちは、外から来た人に会うごとに、妙な顔して「あんたはどうして頭の上に魚を乗せているんだね」と聞く。もちろん聞かれたほうも、何だ?変なこと言い出してと妙な顔をする。
それから数日後の夜、風交じりのすごい雨が降り出し、そのうちに地響きがしたかと思うと、町全体がへこみだした。これに多くの下役人や住民ははほうほうの体で役所や家から遠くへ逃げ出したが、役所にいる県令は何かめでたいことがあったのでろうか、この日は大酒食らったせいか目が醒めない。こうして一夜のうちに町は大きくへこみ、そこへ雨水や近くの川からの水が流れこんできて、町はとうとうかなりでかい池となってしまった。
ところが、面白いことに、町はへこんだが、あのばあさんが住んでいたところだけは、どうしたことかそのままで島となった。その後、この池で漁をする人が時にはこの島に寄り、ばあさんが住んでいたボロ家を壊して頑丈な小屋を立て、時にはこの小屋に泊まるが、この小屋からは池の底となった町がはっきり見えたという。
え?蛇?さあ、本には出ていないのではっきりわからんわい!
そろそろ時間のようです。来週またお会いいたしましょう。
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