「どうもお騒がせしましたな。やっぱりでてきましたか。実は、あれが私の妻でしたな。賢く気の効く妻でした。・・・で、二年前の夏のことですが、当時、私は商いがうまく行かず、どうにかして儲けた金を妻に預けておきました。つまり、家のことは任していたのですよ。そして急にまとまった金が要るようになり、妻に金を出すように言うと、なんと金がなくなっているというのです。怒った私は、酒も入っていたせいか、余計なことをいってしまい、気の強い妻はそれが我慢ならず、なんとあの部屋で首をくくってしまったのですよ・・」
「そんな・・」
「いや、後から思えば、かなりむごいことを言ったものです。金をわざと隠して騙したなんてね」
「それは・・。で、その金はあとでみつかったのですか?」
「いや。で、妻が死んだ後、一人の女中が暇がほしいと、あたふたと実家に帰っていきましたが・・」
「ふんふん。わかった」と趙天如は昨夜、女が梁の上から一つの甕を下ろしてきて、また元に返したことを話した。
「え?梁の上に?」と、主は趙天如と共にかの部屋に行き、はしごを持ってきて梁の上にあがり、かの甕を下ろした来た。あけてみると、いつか儲けた銀貨が詰まっていた。それに中には、かの閑をもらって実家に帰ったという女中のものが入っていた。
しばらくこれを見つめていた主は、急に頭をがんがんと叩き、「私が悪かった!許してくれ!女中が金に目がくらみ、この甕を梁の上に隠したのだ!妻よ!すまん、すまん!許してくれ!」とその場に跪いてしまった。
と、その日の夜半、かの女子が趙天如の夢の中に現れた。
「先生、どうもありがとうございました。これで私も冥土にいけます。いま。先生が教えているのは私の生んだ子です。よろしくお願いしますよ」
女はこういって深々と頭を下げた。この日から、この部屋では何もを起こらなかったという。
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