「で、どのぐらいおんぶして歩くのかまだ決めてないぜ。それをはっきりしなきゃ」
「そうだな。こうしよう。おいらが歌をうたうから、うたい終わったらおいらがあんたをおんぶしよう」
化け物はこれを聞き、どうせそのうちに終わるだろうとおもい、うたい始めたアニンをおんぶして歩き始めた。ところが、アニンはうたの文句を巧みに変えて繰り返し繰り返し長々とその歌をうたい続けた。これに化け物は「おい、おい!あんたの歌はいつうたい終わるのだい?きりがないねえ」
「え?何をいう。おいらのこの歌の文句はまだまだあるんだぜ」
化け物はまた黙ってしまい、苦い顔して歩き続けた。そのうちに午後になったので化け物は疲れ始め、ふうふう言いながら「その歌はまだ終わらないのかえ?いい加減にいしてくれよ」と愚痴をこぼした。
「ええ?もう疲れたのか?約束したじゃないか!この歌をおいらがうたい終わってから、おいらはあんたをおんぶするって!」
「それはそうだが・・ところでよう。それは何の歌だ?途方に長いな」
「ああ、これは天地を切り開くときにうたった歌だ。文句は三万三千三百あるんだ。これでまだ、一千百句しか歌ってないんだよ」
これに化け物は舌を巻いた。
「こうしてはいられん。こんなことをしていたら俺が疲れ死んでしまうよ」と化け物は不意に話題を変えた。
「わかったよ。歌はやめてくれ。俺がもうしばらく、あんたをおんぶするから」
これにアニンはにっこり。
「そう、約束だからな」
「ところでよ。あんたこの世で一番怖いものは何だ?」
ふふん!化け物め、また何か企んでいるなと悟ったアニンは「ええ?この世で一番怖いもの?」
「ああ。この世で一番怖いものだよ」
「そうだな、おいらがこの世で一番怖いものといえば、えーっと!もち米ご飯と・・えーっと。茹でた鶏かな」
「ええ?もち米ご飯と・・茹でた鶏?」
化け物は眉をひそめた。これを悟ったアニンは、わざと「いけねえ。言ってしまった。これを考えただけでも体が震える」と独り言のようにいい、わざと震えて見せた。
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