今度は「間抜けなお化け」です。
「間抜けなお化け」
むかし、むかし、アニンという賢くて肝っ玉の太い男がいた。
ある日、アニンは遠くへ旅に出かけたが、一人ではつまらなくなり、誰か道連れはいないかなと思っていると、山道で不意に向こうから一人の男が現れた。
「おう。あんた、道連れがほしいと思っていたんだろう?」
「うん?どうしてわかった?」
「俺には何でもわかるのさ」
「というあんたは誰だい?」
「俺かい?はは!聞いて驚くなよ。俺は人間に化けたもんだよ」
これを聞いたアニンはぎょっとしたが、なにしろ、幼い時から怖いものなしと来ているから、すぐに落ち着きを取り戻し「へー!そうかい。これははじめまして」
こちら化け物、アニンの態度にいくらかがっかりした。しかし、こんな人間ははじめてだと面白がり、二人は肩を並べて歩き出した。
こうして歩いていると化け物が意地悪な顔をして言い出した。
「どうだい?今のように歩いていると疲れるから、互いにおんぶしていこうじゃないか」
「ええ?うーん、いいだろう。では、先にどっちがおんぶされるんだ?」
「こうしよう。年上のもんが先におんぶされることにしよう」
これを聞いたアニンはこいつはおいらをいじめ始める気だなと悟りながらも表情変えずにいう。
「ああ、いいよ。で、あんたは今年いくつになるんだい?」
「俺か?俺は人間が現れる前にすでにいた。俺はこの世で一番早く生まれたんだ」
これにアニンは、こいつめ、馬鹿にしやがってと思ったが、急に泣き出した。化け物はこれにびっくり。
「おい、おい!どうしたんだよ、急に泣き出したりして」
「いやね。おいらの息子はあんたが生まれた日に死んだんだよ。それを急に思い出して・・」
これには化け物はやられたと黙ってしまった。そしてアニンの前に出て背中を向けた。ということは自分が年下だということを認めたのである。そこでアニンは遠慮なく、化け物におんぶしてもらった。しかし、化け物はアニンをおんぶしながら、「人間に馬鹿にされるとはいったいなんということだ」と悔しがりアニンに聞く。
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