「ご主人。ご安心くだされ。そんなまねは絶対にしませんから」
こうして趙天如は、夕方になってかの部屋に移らしてもらった。そして夕食の後、いくらかの酒で気持ちよくなった趙天如は、今夜は涼しいところでぐっすり眠れると思いかの部屋に入った。
案の定、ここは窓からは涼しい風が時々入ってくる。あまり気持ちいいので趙天如は、明かりをつけたまま蚊帳に入り眠りに落ちた。
どのぐらい経っただろう。趙天如が目を覚まし、のどが渇いたので、床の横に置いてあった水入れの水をうまそうに飲んでから、また横になったとき、部屋の梁の上でコトリと音がした。
「うん?何だ、こんな夜中に」と幼い時から肝っ玉の太かった趙天如は、黙ったまま何が起きるのかと見守ることにした。
すると、梁からきれいな花模様がある靴を履いた女が雲から舞い降りるように降りてきた。それに甕のようなものを抱いている。これに趙天如、体全体が凍りついたような気がしたが、それでも声を出さずに見ていた。すると女は、窓際に行って月を眺め、懐から櫛を取り出して髪を直した後、部屋にある椅子に座り、横の机にその甕を置くと深いため息ついている。そしてまた、梁の上に浮かぶように上がっていき、かの甕を梁の上に隠したあと下りてくると、今度はなんと趙天如の床に来て蚊帳を広げた。びっくりした趙天如が、うわっ!と声を上げたので、女は庭のほうに逃げていく。いったい何者だと趙天如は、その後を追ったが、竹林のところで女はふと姿を消してしまった。これはと趙天如がそこらをさがしたが、何もなかった。
次の日の朝、趙天如は主のところに行って昨夜の出来事を簡単に話した。
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