日本では二十歳になると「成人式」に出席しますが、中国では、各地方や民族によって「成人」となる年齢や儀式の方法が異なります。

　私の周囲の人に聞いたところ、成人式に参加したという人は一人もいませんでした。そして、私もその一人です。でも、私が16歳になったその日、母はめんどりの料理を作って食べさせてくれました。今思えば、それが私の民族・シェー族の習俗だったのかもしれません。

　その時、母は「あなたはもう大人だよ。しっかりしなさい」と真剣な表情で私に言いました。あとで分りましたが、「大人」だからといって、彼氏を作ってもいいというわけではありませんでした。わがままを言わず、両親の立場に立って、ものを考えるよう求められる・・それが母の言う｢大人｣だったのです。

　さて、四川省の涼山地区で暮らすイ族には、少女たちが大人になる特別な儀式があります。その儀式のメインは「スカートを穿きかえる」ということです。これはイ族の言葉で「サラロ」と呼ばれる儀式で、「子供時代のスカートを脱ぎ、大人もののスカートに穿きかえる」という意味があります。

　この成人式に参加できる年齢は明確には決められていません。その子の体の成長ぶりによって異なり、一般的には15歳ー17歳くらいに参加します。儀式を行う日程も定められていません。物知りのお年寄りに頼んで、縁起のよい日を選んでもらい、行われます。

　成人式の日まで、女の子たちは、赤白二色のスカートを穿き、髪は一本のお下げに、そして耳にイアリングの穴がありますが、まだ飾りはつけられません。

　そして、成人式の日。女の子たちは、赤と白に加え、黒とブルーが入ったスカートに着替え、髪は二本のお下げに、そしてそれに色とりどりのハンカチを頭に巻きます。さらに、耳には美しいイアリングが輝いているのです。

　成人式の現場は、男性立ち入り禁止。

　そして儀式の後、イ族の少女たちは、一人前の女性として認められ、大人の世界に入ります。つまり、恋をしてもいいということです。

　成人式当日は、儀式に参加する女の子の家族にとって、めでたい日です。その日は親戚や友人、近所の人などがその家に集まり、みんなで祝います。
（担当：藍暁芹）