「度戒」は、中国南部に生活しているヤオ族の男性の成人式のことです。ヤオ族の男の子が一人前の男性に成長するときに欠かせない・・言い換えれば、乗り越えなければならない「壁」でもあります。多くのところでは、18歳という年齢になると、「大人」と認められますが、ヤオ族の男性の成人は、年齢と関係がありません。「度戒」の儀式さえ終えれば、大人と認められます。
「度戒」は簡単なものではありません。男の子がまだ10歳の時、両親は地元で尊敬されている老人を訪ね、度戒の年を決めてもらいます。その年まであと一、二年というとき、また、度戒の詳しい時期を決め、男の子をできるだけ多くの先生の元に送って、いろいろな勉強をさせます。
そして、度戒の日の前の5日間、男の子は外出が禁じられ、たっぷり睡眠をとることになります。
そして、いよいよ度戒の日を迎えます。日が昇る前に儀式が始まります。先生は男の子のため、お経を読み、法会を行います。その後、先生の指導の元で、法会でしか着ない衣服を身につけ、赤い帯を腰に、そして先祖の画が書かれた飾りを頭にする格好をします。また、一枚の赤い布切れの片方を先生の腰に、もう片方は男の子の腰に巻きつけます。これは、まだ母体から離れていない赤ちゃんの象徴とされます。
先生は、法会用の剣とお札を手にして、男の子を度戒場に導きます。度戒場の中央には、「雲台」と呼ばれる4メートルもある高い台が置かれています。男の子は先生に連れられ、左から右へ三回、回ってからはしごで「雲台」を上っていきます。「雲台」に立つと、先生は男の子とつないだ布切れを解いて、赤ちゃんの母体からの離脱、つまり男の子の独立を宣言します。そして、男の子は、天に向かって、「殺人をしない、強盗をしない、女性を侮辱しない、両親を虐待しない、人を陥れることをしない…」などと誓いを立てます。宣誓後、男の子は、4メートルの台から飛び降りなければなりません。無事が確認されて、ようやく成人式が終わり、男の子が「一人前」と認められます。
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