すると、ボコボコという音がした後、かの花模様の竜がぴゅーと空中にのぼり、またドボーンと渦巻きの真ん中に頭から落ちていった。こうして大波が立ち、今度は黒い何かの塊が出てきて、川下のほうに流れていく。すると竜が浮かび上がり、宙に舞い上がってそれを追う。
岸辺のみんなは怖い顔して、それを追いかけどうなるかと見つめる。
すると黒い塊がふと大きなカニに変わり、二本のはさみを振りかざし、竜に立ち向かいながら、近くの崖によじ登ったところを、竜がおきな尻尾でカニを川に叩き落した。それでもカニは必死になってまた崖に上り逃げようとする。しかし、また竜に叩き落された。これが何回も繰り返され、カニはもうくたくた。そこでカニは崖のぼりはやめて、今度は近くの竹林に逃げ込んだ。すると竜は、川水を一気に吸い込むと、竹林に向けて吹きかける。その勢いはすごいもので、竹はばたばたと倒れ、カニはまたも川に落とされた。そこでカニは最後の力を振り絞り川底にもぐっていった。もちろん、竜はそれに続きもぐる。そのとき、地響きが起きたような揺れをみんなは感じたが、しばらくして静かになった。やがて竜が川から出てきて、岸辺の人たちを一目見たあと、川上のほうへゆっくりと泳ぎだし、そのうちに姿を消してしまった。
しばらくすると、川面に誰かが浮かび上がり、声を出して助けを呼び求めているようだ。みるとカニの化け物にさらわれたプカの妻ペーカンであった。そこでプカがあわてて川に飛び込み妻を救った。
「プカ!私が助かったのはあの花模様の竜のおかげよ」
これを聞いたプカとみんなは竜に感謝し、川上の方にお辞儀した。
このことはすぐにここら一帯に伝わり、人々は人間を助けた竜を記念するため、今度は大きく、長くて屋根が付いた廊下のような橋を作り、廊下を支える何本かの柱に竜の模様を彫りこんだ。そして橋が出来上がってみんながそれを祝っていると、不意に空の雲が一匹の竜のような形になり、ピカピカ光ったので、これにみんなは大喜び。もちろん手を合わせて感謝した。
その後、ある人はこの橋を竜が帰るという意味の回竜橋と呼び、ある人は人間を助けた竜は花模様だったので花橋と呼んだ。しかし、この橋は屋根が付き、釘を一本も使っていないのに頑丈に出来ていることから、そのうちに風と雨をよける役割を果たすことから風雨橋と呼ばれたわい。
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