このように長官が、この医者を馬鹿にしているとき、不意に自分の肩で何かが這い回っているような気がしたので、笑うのをやめて肩を触ってみると何もない。これを見た足の悪い医者は笑っていう。
「はははっはっは!長官さま!あなたはご存知でしょう?この世のことは可笑しな仕組みになっているのが多いんですよ。考えても見なさい。立派な家を建てるものが、なんとぼろ小屋に住み、蚕を養っているものでも立派な服を着れずにぼろぼろの衣装をまとって暮らしているのですぞ。また、作物を作っている百姓はなんと毎日腹をすかしており、悪人を取締るはずの役人が、裏で汚い金を受け取り、私腹を肥やしているのですぞ!長官さまは、どうしてこれらのことを考えないのですかね!?」
これを聞いた長官、この足の悪い医者が自分の痛いところを突くとは思ってもいなかったので、顔を真っ赤にして怒り出した。
「無礼者!ここをどこだと思っておる!わしは地元の長官じゃ!そんなことお前に言われる筋はない!」
これに足の悪い医者はにやっと笑うだけ!これに長官は、「ものども!こやつを死ぬ罪を犯した者を放り込む牢獄にぶち込んでおけ!」と命じた。
こうして長官は奥にさがり、足の悪い医者はその牢獄に入れられた。
しばらくして長官は背中にひどい痛みを感じたので、あわてて上着を脱いで見るとなんと、肩から背中にかけてボツボツが出ており、痒くなりだした。そのうちにこれらボツボツは一つ一つのできものに変わり、ひどく痛み出しので、長官は床の上で悲鳴を上げた。これを見た下のものがいう。
「旦那さま!どうななされました?そんなに痛むのであれば、かの足の悪い医者にみてもらいなされまし。奴はできものや腫れ物を治すことでは、いまの杭州では右に出るものはいないと申しますから」
これを聞いた長官は、あまりの痛さに我慢できなくなり、仕方なく足の悪い医者を牢獄から出して自分の床に連れてこさせた。
そこでこの医者は長官の背中を見たあと、自分の薬箱を持ってこさせ、かの膏薬を取り出し長官の背中に貼った。そして長官が「こやつを元の牢獄に閉じ込めておけ」と命じたので、手下が医者を牢獄に戻した。
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