さて、長官は膏薬を貼ったあと痛みが取れたのでそのまま寝てしまったが、翌朝、また背中が痛み出し、できものから膿が流れてきたので、これはかの医者の仕業だと思い、またこの医者を牢獄から連れてこさせて「きさま!膏薬に毒を塗ったな!おのれ!!」と痛みをこらえて怒鳴った。
「長官さま、何を申されます?どれどれ、どうなったか見てみましょう。うーん!これはひどい。これは手当てができないまでになっておりますな。これも長官さまが、普段から良心に欠けたことをおやりになったので。罰が当たったのかもしれませんぞ。私の貼った膏薬のせいではありませんよ」
これを聞いた長官、怒りのあまりがたがた震えだし、そのうちに声を振り絞って「こやつの首をはねろ!」と叫んだあと、白目をむいた挙句、なんと息を引き取ってしまった。
これに下の者はあわてふためいたが、それでも長官が言い残したとおり、この医者を引き回しにしたあと、ある場所で首をはねることにした。
このうわさを聞いた人々は、医者に同情し、道の両側に立って悲しい目でこれを見送ったが、かの石の橋の上まで来たときに、この医者に足を治してもらった人とその家族が行く手を阻み、どうか、医者の命だけはとらないでくれと役人に願い出た・しかし。役人たちはこれら人々を蹴散らそうとした。
このとき、両手を後ろに縛られて馬に乗せられていた医者が叫んだ。
「皆の衆!ありがとう。長官は悪いことをし続けたため、罰があたり、地獄に落ちましたぞ。そこでこれら役人は長官が言い残したとおりに、私を殺そうとしています。仕方がない。私はいきますよ。皆の衆、さらば!」
この医者はこういい残し、あっという間に橋の上から河に飛び込んだ。すると、飛び込んだところの川面に渦ができて、そこから青い煙が立ち、その渦の真ん中からかの医者が宙に浮き上がり、みんなが見ている前で、医者は空にどんどん上り始め、そのうちに雲の中に消えてしまったわい。
これを見た人々は、この医者が悪を懲らしめにやってきた仙人であったことを始めてさとり、この日から杭州の人々は、いつもこの橋にやってきてかの医者が戻ってきてくれることを待ったので、のちに石の橋は仙人を待ち望む橋という意味の「望仙橋」と呼ばれるようになったそうな。
そろそろ時間のようです。来週またお会いいたしましょう。
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