ではここで酒にまつわる昔の笑い話です。
「雨と酒」 明代の人、趙南星が書いた本「笑賛」から。
朱さんはかなりの酒好きで、下男を連れて友人の家でご馳走になって帰途に着いたが、なんだかまだ飲み足り ない。そこで、途中の酒屋に入り込み、またゆるりと飲み始めた。
こちら下男、速いとこ屋敷に帰らなくては、奥様にまたしかられると思い、時を見計らって外に出てみると、黒雲が出てきていまにも振りそうな空模様になったので、慌てて主人に、「旦那さま、外はもうすぐ雨が降りまするよ。早くお帰りにならないと、びしょ濡れになりまする。どうか、お腰をお上げくださいまし」
これには主人、「なに?雨が降るとな?雨が振れば帰れないではないか。まあ、そこにおとなしくすわっとれ」と飲み続ける。
しばらくして本当に雨が降り出した。
「ほれ見ろ!お前の言うこと聞いていれば、今頃はびしょ濡れじゃ!ふん!」
これには下男、苦い顔して黙り込み、ただ、主人が杯重ねるのを見つめているばかり。
やがて雨がどうにか止んだので、今度こそはと主人に言った。
「旦那さま。雨はもう止みましたので・・」
「うん?雨が止んだ。それでは何も心配することはない。うい_!ここのさけはうまいから、飲み続けるぞ!!ひっく!」
これじゃ、きりがありませんね。
「肴をまつ?」清の「笑倒」という本からです。
親父と息子が天秤棒で酒樽かついで帰途についていた。
「息子や、この酒は値が幾らか張ったが、うまいのじゃぞ!家帰ったら、母さんにうまい料理作ってもらい、たっぷり飲もうな」
「そうだね。とうちゃん。この酒はこれまでのより香りがいいし、きっと気持ちよく酔えるよ」
「あたりまえだ!それが目的で、こんな遠くまでお前と二人で買いに来たんだものな。晩酌が楽しみだ」
「そういうこと、そういうこと」
と親子二人がホクホク顔でいると、どうしたことが石畳まで来て、二人は足元をすべらせた。お陰で担いでいた酒樽を落としていまし、ガシャーンと割れてしまった。そこで息子は慌てて地べたにしゃがみこみ、くぼみに溜まった酒をズースーと吸い飲みし始めた。
が、こちら親父のほうはせっかくの酒樽を壊し、うまい酒が台無しになったのでカンカン。「こら!お前は何をしとるんじゃ!!」
これを見た息子は、相変わらず地面にしゃがみこんで酒を吸い飲みししならがこう答えた。
「とうちゃん、早くのみなよ。もっやいないよ。それとも酒の肴待ってるのかい?」
やれやれ!
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