こんなことがありました。それは、石延年が海州というところで、政治の監督官をしていると、とっくに酒友達となっていたかの劉潜が訪ねてきました。そこで石延年は早速、劉潜を、近くを流れる川のほとりの石闥(たつ)堰というところに劉潜を招き、酌み交わし始め、それもすごい勢いで飲み、途中で舟に乗って引き続き杯を交わし、夜半までそれが続きましたが、なんと船に乗せたに酒を全部飲んでしまいそうになりました。しかし二人はまだ飲み足りないので、誰かに酒を買いに行かせようとしましたが、こんな夜中なのでどこの店も閉まっている。仕方がないので、舟に載せてあった一樽ものお酢を残った酒にうめて、それを、朝になるまで全部飲んでしまったのです。すごいですね。でも、お酢を酒にうめて飲むとは変わってますね。この林涛にはできません。
さて、石延年は酒については異人だとよく言われますが、そうらしいんです。というのは、彼は他の飲兵衛より酒が強いばかりでなく、みんなと争って奇趣をほしいままにしたというんです。例えば、髪の毛をばさばさにし、はだしとなり、囚人のなりをして首かせをつけて大酒を飲むんです。彼はこれを「囚飲」とよんだそうです。また、彼は樹の上で酒を飲んで「巣飲」と呼び、酒を一杯飲んでから樹に登り、また下りてきて飲むことを鶴の酒飲みという意味の「鶴飲」と呼びました。そして藁束の中から頭を出して飲み、飲み終えるとまた、頭を引っ込めて「亀飲」としています。時には彼は、夜に明かりを点さず、真っ暗闇で飲み、これを幽霊が酒を飲むという意味の「鬼飲」とし、葬式に出席して歌いながら飲むことを「了飲」とよんでいました。何ですかね。このヒトは面白い酒仙ですね。この林涛でしたら、土砂降りの雨の中で、杯に雨が入らないように小さな傘さして酒を飲む。これぞ「雨中酒」。釣りをしながらちびちびやる。これぞ「釣り酒」だなんで、余り面白くないから止めときましょう。
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