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「正直者」(二)
   2007-05-08 15:20:54    cri
 さて、これを見送った屈さん、「ああ。腹が減った!ぺこぺこだよ。でも、いいことをしたから、たくさんお金がはいったな。え?銀十両なんでうまれてはじめてだよ。うれしいね」といいながら、ニコニコ顔でいつものように楓橋鎮にやってきた。するとそこを流れる川に架けられた橋の側で、きれいな娘が父親に寄り添って立ち、シクシクと泣いているではなか。これに野次馬が、まわりでわいわいがやがや。そこで屈さんがそこにいた物乞いの仲間にわけを聞いてみた。するとその仲間が言う。

 「あの子の親父さんが、曹という金貸しから借金してね。それにかなりの利子がついてしまい、とうとう返せなくなっちまったらしいんだ。そこで曹という金貸しは、きれいなあの娘さんに目をつけたらしく、金が期限どおり返せないなら、娘を金と引き換えに渡せと脅かしたらしいんだ」

 これを聞いた屈さんは、怒り出した。

 「どうせ、高利貸しのことだから、はじめからよくない企みがあったんだろうに」

 「そうかも知れねえな」

 「で、借りた金はいくらなんだい?」

 「何でも、銀五両ということだが、それが半月のうちに十両にふくれあがったということだよ」

 「へえ!?半月に二倍にかえ?!」

 「そうさ!二倍の十両だとよ。おどろくじゃねえか。ひでえもんだな」

 そこで、屈さんはさっきの男からお礼としてもらった銀十両がふところに入っているのを思い出し、悪い足を引きずりながら人を掻き分け、その親子のいる前まで来て怒鳴った。

 「ひどい金貸しがいたもんだね!たったの五両が半月のうちに十両になるなんで、まったくその金貸しは人間じゃなくて悪魔だよ!!」

 野次馬やちは、足を引きずったみすぼらしい身なりの男が、中に入ってきて急に大声でこういったものだから驚いた。

 「何だ?何だ?この男は?」とみんなが騒いでいると、その曹という金貸しも近くにいたらしく、この屈さんの怒鳴り声を聞いて怒り出し、怖い顔して屈さんの側に来た。

 「おい!おい!なんだい、おまえは!?ははあ!お前は物乞いだな!一銭もないくせに、何をここでほざいている!」

 「なんだと!」

 これには屈さんも言い返す。

 「なにがなんだとだ!?そんなお前に金が在るのかえ?なんだったら、お前、この親子の代わりに銀十両だしてみろ!ふん!」

 これを聞いた屈さん、金貸しをにらみながら、懐からかの銀十両を取り出して金貸しに渡し、「さあ、ここに銀十両ある。これでこの親父さんが金を借りたという証文を返せ!」という。

 これには金貸しだけでなく、周りの野次馬もびっくり。特に金貸しは、自分をにらんでいる物乞いが、この場で銀に十両を出すとは思っても見なかったが、本当に出したのだから、金を貸したという証文をしぶしぶと懐からだして、屈さんに渡した。そこで屈さんは、その証文を娘の父に渡したので、親子は何度も屈さん礼をいい、その場を去って行った。また野次馬たちも、一件落着だとその場を離れていく。

 で、面白くないのが曹そうという金貸し。もともと金を取り戻すことが目当てではなく、娘がきれいだったので自分のものにしようと思ったのだが、なんと物乞いの屈さんが出てきたことから、この企みが泡と消えてしまったので、悔しくて仕方がない。

 そこで、その足で役所に行き、金を使って下役人を抱え込み、夜中に人の家に忍び込み盗みを働いたという罪で屈さんを縛り上げさせ、県令の前へ突き出させた。

 こちら県令、足を悪くしている屈さんが人の家の壁を乗り越え、抜き足差し足で盗みを働いたとはどうも信じられない。そこで、盗みを働いたことなど頑として認めない屈さんを一応牢獄に入れておき、詳しく調べることにした。

 実は、物乞いの屈さんがみんなのまえでかの親子を救うために銀十両を出したといううわさは、すでに町中に広がっていた。

 そして屈さんが牢へ入れられた翌日、屈さんに財布を返してもらったかの商人がことを済ませ、ふるさとに帰る途中に、ここ蘇州に立ち寄り、ちょうど楓橋鎮の近くの宿に入った。そのとき、この町では一人の物乞いが銀十両で人を助けたあと、盗みを働いたとして牢に入れられたといううわさを耳にした。

 「それは、あの正直者の物乞いにちがいない」と商人は、自分の恩人を救うため、腹ごしらえもせずに、さっそく役所にいって県令に会わしてくれという。普段なら県令に容易に会えるわけはないのだが、このことは町中のうわさとなっており、県令自身も屈さんが下手人だとは思えず、考え込んでいたところなので、この件について県令に是が非でも会いたいと申し出てきたものがいたのですぐに会った。そこで商人は、屈さんの顔かたちや身なりをきいたあと、屈さんのことを褒め始め、ことの仔細を県令に話した。

 これを聞いた県令、大いに感動し、さっそく牢から屈さんを出した。そして「話はあの商人から詳しく聞いた。お前も正直でいいやつじゃな」といい、その場でうまいものを食べさせた。そして曹という金貸しを誣告の罪で牢にいれ、金で抱き込まれたかの下役人をも牢獄にぶち込みんだ。県令はまた、楓橋鎮一帯の米屋に毎日農家から買い上げた米の一部を行いのよい屈さんにくれてやるよう言いつけ、カゴで寺まで送らせたという。

 さて、屈さんはこのことがあってから、毎日米屋から米をもらえるようになり、それに米もかなり蓄えたので、それを売って金に換え、町の医者に自分の悪い足を見てもらった。こうして屈さんの足もよくなり、普通に歩けるようになったので、いつまでも物乞いではだめだと、残ったお金で商いを始めようとすると、彼の人柄を褒め、屈さんだったら大丈夫だと、多くの人が屈さんの商いを助けてくれる。こうして数年もたたないうちに、屈さんは金持ちになったので、嫁さんもらって子供ももうけ、幸せに暮らしたという。はい!!

 そろそろ時間のようです。では、来週またお会いいたましょう。

中国昔話
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