「そうじゃ。そのイタチはかなり長生きしていくらか術を心得ておったわい」
「化け物イタチですな」
「まあ、そこまではいかんが、今は罰を受けて首をはねられとる」
「死んだのですか?」
「ああ。そこもと、暇なときに東村へ帰って祠の裏を掘ってみなされ」
これをきいた劉公は張天師に何度もお礼を言ってそこを下がった。
そこで数日後、劉公は皇帝から数日暇をもらい、何人かの部下を連れて東村に戻ってきた。そしてかつて呼んだ自分の生徒たちの親を集めた。
「皆の衆、私はかつてここの塾で読み書きを教えていた劉公。つまり、関帝の前で"もし、この劉公が恥知らずなことをしたなら、あなた様の祠を出るときにひっくり返ります!"と誓った後、門のところでひっくり返り、大恥をかいた劉公じゃよ!」
これを聞いた親たちはびっくり。かの鶏を盗んだ塾の先生が、いまは皇帝の側で大事な役目についていると知っておののき始めた。
これを見た劉公
「いや、私は仕返しなどに来たのではない。あのときの皆の衆の疑いを晴らしに来たのじゃ」
これを来てみんなは怪訝な顔をしてどうして疑いを晴らすのか耳を傾けた。
「実は、当時、ここの祠の裏に長生きしたイタチが棲んでおってのう。それが関羽の像に化けおって、貧乏な私にいたずらし、私を門に引っ掛けて転ばしたのじゃ」
これにみんなはがやがや!
「今、証拠をお見せしよう」と劉公はみんなを祠の裏に集め、部下に命じてそこらを掘らし始めた。
やがて大きな穴が見つかり、そこから首をはねられたらしい大きなイタチのなきがらが出てきた。
こうして、ことのいきさつがはっきりし、皆の衆は劉公を疑ったりしてすまなかったと一生懸命謝りだした。
「いやいや。ことがはっきりすればそれでよいこと。何も皆の衆のせいではありませんからな」
これを聞いたみんなは安心したが、当の劉公がしばらく目をつぶっていたのでどうしたことかと気をもんでいると、劉公は急に言い出した。
「実にかわいそうなイタチよ。いたずら心が出たばかりに命をうしなってしもうたな。これも自業自得といってしまえばそれで終わりだがな。しかし、お前が私にいたずらしなければ、私はその後、出世もせずに、のちのちまで田舎の読み書きの先生として終わっただろうに。つまり、お前がいたずらしたおかげで、私は奮い立ち、懸命に学問に励んで官途に就き、いまは御史という役目をしておられるのじゃ。この点ではお前に礼をいわねばならんなあ。ありがとう、イタチ!」
こういい終わると、劉公は手下に深い穴を掘らせ、そこにイタチのなきがらを布に包んで入れて土をかぶせて墓とし、「ありがとう、イタチ」という意味の字を書いた札をその上差した。そして劉公はその札に一礼した後、都に帰っていったという。
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