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鉄棒の韓
   2007-04-24 10:52:53    cri

 今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。

 4月もあと残り少なくなり、このごろは毎年のように 柳の白い芽が雪のように舞い始め、また、公園ではいろいろな花が咲いています。でも、この林涛は花のことはあまり分からないので、その話はやめておきましょう。

 今日のこの時間は、昔の本「子不語」から「鉄棒の韓」と言うお話と昔の笑い話を一つご紹介いたしましょう。

 まず最初は、「鉄棒の韓」(鉄棍韓)

 いつのことかはっきり分からん。山西の汾陽に韓含竜という男がいた。ここでは韓さんと呼んでおこう。

 韓さんは貧乏で住む家もなく、町外れの誰もいない古いお寺に住み込み、日雇いで野良仕事をしてその日その日をしのいでいた。

 と、ある夕方、韓さんが疲れた体を引きずり、寺に戻ると、なんと門の前に誰かが倒れている。さっそく抱き起こしてみると、どうもどこかの道士らしく、それに高い熱を出し、体が弱りきっているらしく気を失っていた。そこで韓さんは道士を背負って寺に入り、自分が寝起きしている部屋に寝かせ、境内にある古井戸から汲んだ冷たい水につけた布を道士の額に乗せたりして看病し始めた。すると道士は気がつき、ここはどこだと聞くので韓さんがわけを話すと、道士は安心したのかお礼をいってまた寝てしまった。こうして韓さんは看病を続け、自分の稼いだわずかな金でおかゆなどを作って道士に食べさせたりしたので、道士は二週間後には元気を取り戻し始めた。

 ある日、道士が韓さんにいう。

 「韓さん。これまで私の面倒をよく見てくれた。本当にありがとう。あんたの恩は忘れない。恩返ししたいのだ」

 「いやいや、お礼なんかいらないや。あんたが元気になってくれりゃいいんだよ」

 「すまないね。実はわしは今日ここを離れなければならない」

 「え?今日いっちゃうの?」

 「うん。そこで、あんたへのお礼として私がこれまで蓄えてきたものを貸してあげよう」

 「ええ?おいらになにかを貸してくれるって?なんだいそれは?」

 「これを飲み込めば、力がつき、いい暮らしができるだろう」

 「ほんとうかい?」

 「うん。しかし、五十年後にはそれを私の弟子に返してくださいな」

 「う、うん、分かった、きっと返すよ」

 「いいですかな。あんたが豊かになっても、金を使って悪いことはしなさんな

 そんなことをすると、命を縮めますぞ」

 「うへ!わかった、わかった」

 これを聞いた道士は懐から小麦粉で作った小さな山羊を取り出し、韓さんに口をあけさせ中に入れた。そこで韓さんが歯で噛もうとするとそれはするっと喉を通って胃袋に入ってしまった。これに韓さんが驚いているうちに、道士は韓さんのおでこを軽くつついたので、韓さんは急にめまいがして気を失ってしまったわい。

 しばらくして気がついた韓さん、周りを見ると道士の姿はすでになかった。そこで道士の言葉を思い出し外に出て庭においてあった鋤や鍬を手にとると、なんとわらを掴んでいるようにそれが軽い。こうして翌日、韓さんは地主の家で作男として雇ってくれと頼み、自分が力持ちだということを見せるために、近くにあった大きな石を軽々と持ち上げたりした。これを見た地主は、次の日から韓さんを作男として雇った。そして韓さんは働き始め、なんと人の数倍もの野良仕事をやってのけ、また人の数倍もの飯を食った。もちろん、これに地主は大喜び。

 と、ある日、地主は韓さんに石炭運びをやらせたが、帰ってくる途中の坂で石炭を積んだ荷車を引く驢馬がひっくり返り、荷車が倒れそうになった。このとき、韓さんは後ろで荷車を支え、自分だけの力で荷車を坂の下まで押していったので、これを見ていたほかの作男がびっくり。早速このことを地主に伝えた。

 これを聞いた地主は驚き、韓さんには野良仕事をやらせず、自分の商いでもある布屋の布を運ぶときの用心棒の一人とした。

 こうして用心棒になった韓さんは布をいっぱい積んだ数台の荷車について都に向った。

 そして途中で山賊に出くわし、他の用心棒は山賊にやられてしまったが、得物がない韓さんは、道端の太い木を引っこ抜くと、それを細い枝を扱うように振り回したので、山賊どもは見事追い払われてしまった。

 これをあとで聞いた地主は、韓さんに褒美をたくさん出したので、韓さんはその金で鉄を買い、鍛冶屋に行って自分の背丈よりもはるかに長く、重さが大きな牛ぐらいはある鉄の棒を打ってもらい、これを得物として使うようした。実は韓さん、棒術を習ったわけでもなく、ただその重い鉄の棒を力任せに思いっきり振り回すだけだったが、それだけでも相手になるものはいなかった。こうして韓さんの強さが認められ、「鉄棒の韓」と呼ばれるようになり、山賊たちも彼のことを恐れた。

 韓さんは荷車の上に鉄棒を立てに挿し、人にかいてもらった韓の字がある旗を鉄棒に結んだので、これを遠くから見た山賊どもは「これはいやなやつにが来た」と手を出さずに眺めるだけだったので、荷車は何事もなく目的地に着くのであった。

 それから数年がたったあるとき。韓さんはいつものように用心棒として都に来て宿に住み込むと、ある大男がたずねに来た。

 「拙者は山東の生まれで白二と申すもの、そこもとはご存知かな?」

 これに韓さんは、きょとんとした。

 「ご存じないらしいな。実はそこもとは鉄の棒をうまく操られると聞いたので、その技を拝見にまいった。どうでござる?」

 「白二さんとかいったね?おいらの技を見て何する気かな?」

 「実は、これまで拙者を負かせるものにはあっておらんのでのう」

 「ふーん?それで?」

 「まずは、そこもとの鉄の棒を拝見できんかな」

 「ああ。かまわないよ。外にある荷車に挿してあるから自分でもってみな」

 これをきいた白二は早速荷車から韓さんの鉄棒を軽々と引き抜いて自分でも振ってみた。これをみた韓さんは、ほう、自分と同じ力持ちだなとおもった。

 白二はいう。

 「ははーん。これがそこもとの鉄の棒でござるか。どうでござろう。この棒で拙者を思い切り殴ってみないか?もし、うめき声を上げたら拙者の負けとしておとなしくここを離れる」

 これを聞いた韓さん、苦い顔をして言う。

 「ちょっと、ちょっと。あんたとおいらはいま初めて会ったばかりだぜ?どうして始めたあったをあんたを重い鉄の棒で殴らなければならないんだい?」

 「これは修行でござる」

 「修行?まあなんでもいいけど、そんなに力比べをしたいなら、こうしよう」

 「どうしようというのでござる?」

 「簡単さ!おいらの曲げた指をあんたがまっすぐにできたらあんたの勝ちだということさ」

 「ほう?申されたな。ではやってみましょうか!」

 そこで、韓さんは左の人差し指をまげて白二の前に差し出した。そこで白二はさっそく、韓さんの曲がった指をぎゅっとつかまえたが、その隙を見て韓さんは、右手を出して相手の太い腰紐を掴み、大きな白二を軽々と頭の上に持ち上げると、えい!と遠くへ放り投げた。

 こちら白二、大男である自分が人に頭上に持ち上げられ、軽々と放り投げられたのは生まれて初めて。それにいやというほど地べたに投げつけられたので、痛くてすぐには起き上がれなかった。

 一方、韓さんは息もつかずに横ににある椅子に座ってニコニコ顔で自分を見ているではないか。これに白二も参り、やっとのことで立ち上がると、韓さんに近づき、「拙者は山東の知れた盗人の大物で、これまで負けたことがなかったが、今日は初めて自分より強い人物に出くわした。では失礼!」と言い残し、その場を去っていった。

 このことがあってから、韓さんは、山東一帯でも怖がられ、この後二十年も用心棒をしたが、渡り合える相手は一人もいなかったという。

 こうして韓さんは賞金としてかなりの金が貯まったので、今の仕事を一生やって暮らすわけには行かないと用心棒家業を止め、故郷の帰った。しかし、かの韓さんを雇った地主は韓さんに鉄の棒を残してもらい、その後二十年もこの棒を荷車において山賊らを怖がらせたという。

 さて、当の韓さんは、ふるさとで田畑を買い、嫁さんもらって二人の子を儲け、ゆとりのある暮らしをして過ごした。

 やがて五十年という月日が流れた。韓さんもこのときには七十を過ぎていた。

 ある日。韓さんが他の人たちと大きな庭で獲ったばかりの麦を、鍬ですくってゆっくりと乾かしていると、不意に一匹の山羊がどこからかやってきた。

 「ありゃ?山羊が来たぞ。この辺には山羊なんかいないはずなのに、おかしいな?」

 これを聞いた韓さん、その山羊のほうを見ると、山羊は韓さんを一目見ただけで走り出し、近くの大きな井戸に飛び込んだ。さあ大変とみんなが騒いでいると、韓さんはなにかを思い出したのか、黙ってその井戸に飛び込み、助けだそうと山羊を持ち上げ、井戸の外へ出そうとしたが、不思議なことに韓さん自身も、宙に浮いてしまった。そして井戸から白い煙が出てきて、かの山羊は空のどこかえ飛んでいったが、韓さんは無事地面に尻餅をついて降りてきた。このとき韓さんは急に体中から力が抜けるような感じがしたので、これは五十年前に救ったかの道士が、自分のものを取り戻しに来たのだと悟った。案の定、そのときから、韓さんは力持ちではなくなり他の人と変わるところはなくなったワイ。

 それでも、韓さんは元気で暮らし、なんと九十過ぎまで幸せに生きたというわい。

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