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乾隆帝、料亭で怒る
   2007-04-17 11:36:03    cri

 さて、この時間は、中部は江蘇地方の蘇州に伝わる、清の乾隆帝と料理にまつわるお話をご紹介いたしましょう。

 蘇州は古い庭園があることで知られていますが、地元には多くのおいしい料理があることも忘れていはいけません。清の時代にここには「松鶴楼」という料亭があり、その「松鼠(そ)黄魚」は看板料理だったらしく、この「松鼠黄魚」ですが、そうですね。日本では、イシモチ(海の魚)の丸揚げ甘酢あんかけというらしいですね。

 では、今日は清の乾隆帝について地元に伝わるお話をご紹介いたしましょう。題して「乾隆帝、料亭で怒る」

 清の時代のこと。時の皇帝乾隆帝が長江以南の地方をまわり、この日は護衛もつれずに私服で蘇州の町にやってきた。というのは乾隆帝は若いときから武術の心得があるからで、自分ひとりで大丈夫がと思っているのだろう。時は三月、ここら一帯は木々は緑に光り、花は咲き鳥が鳴き、人々は郊外に遊びに出かけて、それはのどかであり、空気も気持ちよかった。

    

 で、乾隆帝はいくつかの景色をのんびりとながめ歩いたのでいくらか疲れもし、腹も減っていた。そこで腹ごしらえにうまいものを出す店を探していたが、まもなく「松鶴楼」という料亭の看板が眼につき、「うん?なかなかよい名前じゃ」とこの店に入った。この店はかなり繁盛しているらしく、中の作りはかなりいい。実はこの日、店の主は母の誕生日祝いをし、奥の大きな部屋では幾つもの卓に母と親戚や友人たちが座り、それは賑やかであった。またそれ以外の客もかなり入っていたので、店は忙しかった。乾隆帝は自分はお忍びなので隅のあいている席に座ったが、注文を聞きに来た店の小僧、乾隆帝の靴にいくらか乾いた泥がついているのを見て、こいつは田舎のものだと馬鹿にし、人を見下げるような声で聞く。

 「ああ。お客さんは何を注文するんだね?」

 これに乾隆帝はむっとなったが、いまは腹の虫を治めるのが大事だとおもい答えた。

 「うん。うまい料理をここに運べ」

 これを聞いた店の小僧、「なんだ?田舎もののくせに!うちの料理は高いんだぞ。そんな金持っているのか?」と思い、黙って奥へいくと、この店で一番安い料理を乾隆帝の前に並べた。そこで乾隆帝は何も聞かず箸を取り、食べ始めたが、どうもうまいとはいえない。    

 「うん?この店にはもっとうまいものはないのか?」

 これに小僧は、横目で乾隆帝を見て答える。

 「ありませんね。お客さんはそれで十分でしょう?」

 乾隆帝はこれに怒りそうになったが、そのとき、他の小者がうまそうな匂いがする立派な魚料理を載せた大皿をかの店の主たちがいるところへ運ぼうと奥の厨房から出てきた。これを見た乾隆帝は、「あれをここへもて」という。

 かの小僧はこれに目を丸くし、「あんた、あれはたかいんだよ?そんな金持ってるのかい?」と聞く。乾隆帝はこの小僧を相手にせず、大皿を手にしている小者に「これ!その料理をここに運べ」と声を大きくしていった。こちら声を掛けられた小者は、「なんという客だ、とんでもないことを言い出して」と、乾隆帝を睨んでそのまま行こうとした。もちろん、乾隆帝は、それまでの小僧の自分に対する扱いに頭にきており、いま、この小者も自分を馬鹿にしているので、我慢ならんと箸をつけた料理の皿を手で取ると、その小者めがけて投げつけた。もちろん「ガチャ?ン」というものの壊れる音に店中はびっくり。

 と、このとき、背の高い強そうな男が店に入ってきて乾隆帝を見つけるとすばやく近づき、一礼してから耳打ちした。これに康熙帝はちょっと考えてからうなずき、いくらか苦い顔をして席に座った。すると、奥から五十いくつかの男が出てきた。店の主らしく、店のほかの者が急にかしこまってしまった。店の主はことを起こしたのが隅に座っている人物だとわかると、かの小僧を呼びわけをきいてから、すぐには声を掛けず、品定めのようにその人物、つまり、お忍びである乾隆帝を鋭い眼差しでみたあと、横にたっている背の高い男にもお辞儀して笑顔になり、乾隆帝に近づき頭を下げた。

 「これはこれはお客さま!店のものが大変失礼なことをいたしまして、お許しくださいませ」

 これを聞いた乾隆帝、それまでの怒りがいくらか収まったのか、相手が店の主と見てうなずくと、かの男が懐から二つの金塊を取り出し、「すまんが、この店の看板料理を出してくれ」という。主は、もう一度乾隆帝をみた。こちら乾隆帝は、知らん顔してあごをさすり上の空でいる。そこで主、「このお方は只者ではないぞ。気質が違うし、かなり上品だ。これは都からきた大官、または皇族の一人に決まっている。それに、強そうな男はこのお方の護衛らしい・・これは大変なことだ!」と奥で自分を待っている母、親戚と友達をほったらかすことにした。

 「はいはい、わかりました。いま、うちの看板料理をお持ちします。あなたさまのお口に合いますかどうかわかりませんが。それより、そんな隅にお座りなさらずと、どうか、あの個室においでくださいまし」

 そこで、乾隆帝は横に立っている人物に眼をやり、その人物がうなずいたものだから、「そうさせてもらうか」と立ち上がり、主の案内で奥の個室に移った。

 一方、乾隆帝を馬鹿にしていた小僧や小者は、これに驚き、さっそく主の言いつけどおり、これから奥の大きな部屋に運ぼうとしていた大皿にのせたイシモチの丸揚げ甘酢あんかけである「松鼠黄魚」を一番先に運び、そのあとから多くの高い料理を次から次へと出した。また、亭主がお詫びの言葉を続けるので、乾隆帝もいくらか困り、ただ空腹を満たすために、黙って料理に箸を伸ばしていたが、最初に運ばれた料理、つまり、「松鼠黄魚」は、魚の姿を保ち、色もよく、口に入れると甘酸っぱくてうまいので、ほのかの料理もよかったが、これが特に気に入った。

 「うん、うん。主よ。ほかの料理も結構だが、この魚料理はとくにうまいのう」

 これに主は、ニコニコ顔で答える。

 「これはこれは、わたしめの料理があなたさまのお口にあいましたか。恐れいりまする」

    

 「で、この魚料理はなんという名前じゃ?」

 「はい。それはわたしめのふるさとから呼び寄せました料理人が工夫しました『松鼠黄魚』でござります」

 「『松鼠黄魚』とな?」

 「はい。イシモチという魚の骨をきれいに抜きましたあと、その姿を壊さないように油で揚げ、野菜やほかのもの甘酸っぱく炒めて片栗粉で絡め、それを上からかけたものでございます」

 「ほほう!」

 このときの乾隆帝は料理のうまさとこれまで店の主が一心に謝ってきたこともあって、機嫌がよくなっている。

 と、このとき、蘇州の長官が、時の皇帝が私服できて、丁度町の料亭「松鶴楼」で食事しているとどこからか聞き出したのか、慌てて多くの部下を連れ、この店の前に着き、さっそく中に入って奥の個室にいた乾隆帝を見つけ、何事かと驚いている店の主の前で跪いた。

 「これは、これは皇帝さま。皇帝さまがわたしめらの蘇州に参られたとは知らず、お迎えに出ることもできませんでした、どうか。わたしめの罪をお許しくださいませ」

 こちら店の主、自分と話していた人物が、なんと時の皇帝だったとは夢にも思っていなかったので、驚きと恐ろしさのため、その場にしゃがみこんでしまった。

 「こ、こ、これは、皇帝さまだとはまったく存じませんでした。これまで働きましたわたしらめの無礼を、ど、ど、どうかお許しくださいませ!お許しくださいませ。お願いでございます!」

 店の主は必死である。これをみた乾隆帝、まずは蘇州の長官に答えた。

    

 「その方が、ここの長官か!」

 「はは!去年、地元のお勤めに付いたばかりでございます」

 「そうか。いや。今度は忍びでやってまいったのじゃ。そちが知らんのはあたりまえ。もう立ってよいぞ。迎えご苦労であったな」

 「いえいえ!とんでもござりませぬ」

 そして乾隆帝は今度は土下座している店の亭主にいう。

 「ああ。亭主や、もう立ちなさい。こちらが黙って店に入ってきたまでのこと。朕の身分は、この横におるものだけが知っているのじゃ。知らぬものに罪なしと昔からいうじゃろう!」

 「は、はい。では・・」

 「もうよい、もうよい。で、朕はもう怒ってはおらん。よいか!かの朕の世話をした小者たちを罰してはならんぞ」

 「は、はい。ありがとうございます」

 「しかし、よく言い聞かせるのじゃ。身なりを見て人を馬鹿にするのはよくないとな」

 「はは!、わかりましてございます!」

 「なにしろ。お前の店の料理はうまい。これからもこの味をまもっていくのじゃぞ」

 「はい。この味を守ってまいります」

 こうして乾隆帝は上機嫌になり、またも供であるかの男に三つの金塊を褒美として主に渡させ、微笑みながら店を離れ、蘇州の長官が用意した駕籠に乗って行ってしまったという。

 このときから「松鶴楼」の主は、表に「乾隆帝が好む、蘇州一番の料理」という意味のことを書いた大きな看板をかけて、自分の店の「松鼠黄魚」を大いに売り込んだので、このときから「松鶴楼」の「松鼠黄魚」の名は瞬く間に広がり、蘇州一の料理となった。実は、その後も乾隆帝は蘇州に二回ほど来た時に、必ず「松鶴楼」に寄ってこの魚料理を食べたものだから、「松鼠黄魚」は蘇州の名物料理になり、今でも続いているワイ!

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