「なんと・・それは、わしが下のものにいまさっき買わせに行ったもの。どこから買ったかは知らんが・・・。で、貴公は家を出る前に、貴公の蘭があるかどうか確かめてはおらんのか?」
「いや。わたしは書斎に行っておらんので、花があるかないかはわからん。しかし、わたしの書斎にあるはずの花が、どうして趙公どのの書斎にあるのかな?」
そこで趙公は若者を見た。これは黙っていられないと見た若者が口を開いた。
「あなたさまの家の蘭は、鉢はひびが入っていますね。しかし、うちの趙公さまの蘭の鉢は真新しいものですよ」
そこで友人は鉢を見てため息をつき、あとは趙公とつまらん話をしてから帰っていった。
そこで若者は趙公に、「昨日、わたしの実家では多くの蘭を植えたと言いましたね」
「うん、そう申したな」
「ではこれから、それを見に行きましょう」と若者が言うので、趙公は喜び、さっそく馬車を用意させ、下男を連れて出かけた。こうしてかなり馬車を走らせ、なんと山奥の道まで来たとき、周りに蘭の花が咲き誇っているので、趙公はわれを忘れてそれに見とれていた。しばらくして若者が話しかけてきたので、趙公は振り返ったが、そこにいるのは下男だけで若者の姿はどこにもない。そこで趙公と下男はそれから若者の名を呼んだが、とうとう若者はどこかへいってしまったらしい。趙公は仕方なく屋敷に戻った。すると書斎の机の上に一通の手紙が置いてあるでさっそく見た。それには「趙公さま、わたしは仙境から来たもので、あなたの元で暫くでしたが楽しく過ごせました。今朝お持ちした蘭は縁起のいいもので、あなたは長生きし、家族の方も幸せに暮らせるでしょう」と書いてある。
これを見て趙公はおどろいたが、気に入っていた部下が仙人なので、行ってしまうのも仕方ないと思い諦めた。
で、その後、趙公は、なんと九十幾つまで生き、家族も幸せに暮らしたという。
そろそろ時間のようです。来週お会いいたしましょう。
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