
ところで、中国では大晦日のことを「除夕」(じょせき)といいます。夕という字の音読みは「せき」ですね。この「夕」を除くとかいて「除夕」ですが、どうしてこういうのでしょうか?次のお話です。「正月前の化け物退治」
むかしむかし、夕という化け物がいて、正月の前の日になると、決まって遠くの山から下りてきては、人々に害を与えていた。ひどいときには人を食うので、部落の人たちは何とか化け物をやっつけようとした。が、うまくいかず、いつも数人が食われ、家や畑が荒らされた。そこで人々はこの日になると決まって部落ごとどこかに隠れたが、それでも化け物に見つかったりしてひどい目にあっていた。
これを聞いたある力持ちの大男が自分が夕という化け物を退治すると言い出した。この男は「年」といい、山の向こうに住む部落のものだった。年はこの部落が毎年化け物の害を受け困っているとこの部落に住む親戚から聞き、その年の暮れにやってきたのだ。そして部落の男たちを呼び、夕と戦う用意をしていた。
と、正月の前に日、かの夕はやってきた。そこで年は男たちを率いて夕と闘ったが、夕は思ったより強く、部落の男たちはこれはかなわんと逃げ出してしまい、年はとうとう一人で夕と闘わなければならなかった。
こうして年は夕と三十数回わたりあったが、疲れがだんだん出てきた。しかし、化け物の夕は一向に疲れを見せず、年に襲い掛かってくる。
「これはいかん。下手をすると自分も化け物に食われてしまうかもしれん。これは何とかしないと」と思った年は、一旦逃げたが、化け物は怖い声を出して追いかけてくる。そこで一生懸命にげたが、相手は足が自分より速く、もうすぐ追いつきそうになった。これに年は慌てたが、ふと見ると近くの家の庭から煙が出ているので、その垣を飛び越え庭に逃げ込んだ。すると夕は大きな口をあけ、ものすごい形相で、それに続いた。と、そのとき、庭の隅で「バーン!バーン」とい大きな音がし、これに夕はびっくり仰天!あまりにも急なことなので怖くなり、庭を飛び出るとあたふたと山の方へ逃げていった。こちら年は、何が起こったのかわからない。実は夕が自分に続いて庭に入ってきたのを見て、これで終わりだと眼をつぶったほど。しかし、急に何かがはじけるような大きな音がしたので、目を開けてみると、化け物の夕は遠くの方へ逃げていくではないか。
「いったいどうしんだ?」年は庭を見たが、近くで積んであった竹に火がついたのが、年と夕が庭に入ってきたときにそれが炸裂し、その大きな音に慄いた夕が逃げてしまったのである。
「そうか。そうだったのか!」と年は、さっそく逃げていった部落の人たちを呼び戻し、もう化け物は逃げたと告げた。そこでみんなが年を褒め称え、お礼をしようとすると、年は、燃えた竹の裂ける大きな音をに夕が驚き、逃げ出したのだとありのままを話した。
こうしてこのときから、部落の人々はお正月の前に夕という化け物が山から下りて来る前に、事前に用意してあった多くの竹に火をつけ、その炸裂する音で化け物を追っ払ったという。
のちにこの日は夕という化け物を除く日だというので中国では「除夕」と呼んだワイ。
そろそろ時間のようです。来週またお会いいたしましょう。
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