「その仙丹とは?」
「お前がその仙丹を飲み込めば、若返って長生きできるというもの」
「ほ、ほんとうでございますか」
「うそはつかん」と仙人はいい、ふところから一本の笛を取り出し、江さんに渡した。
「いいか。余計なことは考えず、一心にこの笛が吹けるまで頑張れ!」
こういうと仙人はふと消えてしまった。こうして江さんはそのときから笛を吹き始めたがどうも音が出ない。そこで江さんは一生懸命になって吹き、数日後には音が出るようになり、一ヶ月後には何とか吹けるようになった。
こうして三年の月日が流れた。その間、かの仙人は二度だけ江さんの夢の中に出てきただけだが、江さんが苦労して学んだおかげで、笛はかなりいい音色が出るようになっていた。そこで江さんは山をおり、岳陽というところに来て、若いころから付き合いがあった地元の役人の屋敷に泊まった。
さて、それから数日後の夜半、どうも眠れないと江さんは、一人の湖のほとりに来て、かの笛を吹き始めたところ、湖の小島にある洞窟からピカピカ光る玉を咥えた竜が飛んできて、その玉を江さんにくれ、また小島に帰っていった。
そこで、江さんは屋敷に帰り、この玉を三日間煮たところ、一人の若者が屋敷に江さんを訪ねてきた。
「あなたが江さんですね。わたしはここ数日、頭が痛み出したので、あなたを探しに来たんですよ」
「このわたしを?」
「そう。あなたは光る玉を煮ましたね」
「どうしてそれがわかるのですかな」
「わたしは人間ではないのでわかるのです」
「ええ?」
「ここに仙丹があるので、その玉と取り替えてください」
ここで江さんは仙人の言ったことを思い出し、喜んで玉を若者に渡すと若者は懐から仙丹を取り出し江さんにわたし、不意に若い竜の姿になってどこかへ飛んでいってしまった。
そこで江さんは自分の泊まっている部屋に帰り、その仙丹を飲み込むと急に眠気がしたので寝た。
次の朝、江さんが起きて鏡を見てみると、なんと鏡に写ったのは若いときの自分の姿であった。うれしくなった江さんは、若返った江さんを見て驚いている役人に別れを告げ、そのときから自由自在に水の中に入ったりし、方々を旅したりし、そのうちに山に入って仙人になったという。
そろそろ時間のようです。来週またお会いいたしましょう。
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