「そういうことにしよう」
ということになり、翌日は縄を用意してみんなでかの老人が来るのを待っていた。やがて、度胸をつけるため、みんなで昨夜より多く酒を飲み、同じように四方山話をして夜半が来るのを待った。やがて窓の外で何かの音がしたかと思うと、前の夜のように黄色く痩せた一本の手が窓からにゅっと入ってきた。そこで待ってましたとばかりに、みんなは用意していた縄でその手をぐるぐる巻き、動けないようにした。すると外でかの老人の声がする。
「お前さんたち!何をする」
みんなはこれにかまわず、縄を引っ張る。
「わしが悪いことでもしたというのか!かのお人はどこにおる!!」
みんなはこれを聞いてもなおも縄を引っ張るので、急にぐぐぐぐっという音がして縄が瞬く間に解け、黄色い痩せた手は飛ぶように引っ込むと、外で誰かが逃げる音がした。そこでみんなは外に出てみたが、真っ暗でわからない。
「いかん、逃がしてしまったぞ」
「何とかしないと、仕返しに来るかもしれないぞ」
「どうしよう」
「こうなったら、夜が明けるのをまって探しにいくしかない」
「そうだ。逃げたときに何かを引きずる音がしたから、足跡か何かあるに違いない」
ということになり、みんなは夜が明けると、それぞれ棒や刀を手に、かの老人を探しに出かけた。
案の定、鄧珪の住まいから何かが逃げたあとが草むらに残っていたので、それを記しにあとを追っていった。こうして一刻も捜し歩いたところにぶどう棚があり、逃げたあとはそこで消えている。
「うん?ここまで逃げてきたんだな。それじゃあ、あの手がないかどうか早く探してみよう。夜になったら大変だ。やっつけるのは昼のうちに限る」
この鄧珪の言葉に、みんなは探し始めたところ、ぶどう棚の横に、人間の形をした樹があり、その木からかの老人の手にそっくりの黄色い細い枝が生えていた。
「これだ!これに違いない」
「速く焼いてしまおう!さもないと、夜になって仕返しにくるから」
こうしてみんなは、その樹を、根っこごと抜いて、火をくべて焼いてしまった。
さて、それから数日後、鄧珪を含め数人のものが急に熱を出し、もう少しで死んでしまうほど苦しんだという。
やれやれ!
そろそろ時間のようです、来週またお会いいたしましょう。
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