そこで呂さんが床から降りて剣を構えていると、ばあさんが再び出てきて、呂さんに近寄ったとき、呂さんは体中が冷え込む感じがした。これに驚いた呂さんは、また剣を振るったが、その途端、数人ものばあさんがいっぺんに現れた。そしてなんと体を揺らし始め、これをいくらか震えだした呂さんが見ていると、なんとばあさんたちは背丈が一寸あまりの数十ものばあさんに変わった。驚いた呂さんが眼をこすってみると、これらばあさんたちはまったく同じ姿をしており、部屋中をかけ始めた。恐ろしくなった呂さんは悲鳴を上げそうになった。そこで、小人のばあさんたちが「若いの。今。一人に戻るからね」といい、ふっと白い霧みたいなものが立ったかと思うと、もとの一人のばあさんが目の前に立っていた。そこで呂さんは、「ば、ばあさんは、化け物かい?頼むよ。ここを離れてくれ。さ、さもないと道士をここに呼んで、あんたを退治してもらうから」と勇気を出して言う。
これを聞いたばあさんは笑い出した。
「ひひひひ!そんなに慌てることもないだろう。道士をよんでもいいわい。会いたいものだね。実は今日はあんたを冷やかしに来たのさ。そんなに震えることはないよ。もうそろそろわしも帰るから」
こういってばあさんはまた消えたので、呂さんは気が抜けたようにそこにしゃがみこんでしまった。
さて、朝になり、呂さんはさっそく、友達に昨夜おきたことを話した。これを聞いた一人の友達は「都に田という人がいて、魔よけの術を心得ているという。どうだい?その人に頼んでは?」
ということになり、呂さんとその友達は、その田さんのを訪ね、ことの仔細を話した。
そこで田さんがいう。
「そうでしたか。わしは魔よけが得意でしてな。そんな年寄りの化け物をやっつけるのは、蟻を踏みつけるよりも容易でござる。今晩、あんたの家へいきましょう。そのかわり、お礼を忘れぬように」
こうして田さんは約束どおり、その夜に呂さん家に来た。もちろん、呂さんは横でどうなるかを見守っていた。
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