今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。
今日は、まず、清の時代の不思議な話を集めた本「聊斎志異」から「妖術」をご紹介しましょう。
「妖術」
于さんは侠気があり武術をも学んでいた。それに力持ちで重いものを軽々とあしらい、汗もかかなかったという。
時は、明の崇禎年間、于さんは官吏になる試験を受けるため下男を連れ都への旅に向かったが、途中で下男が病にかかり動けなくなった。そこで心配になってその町の易者に占ってみてもらったところ、易者は于さんの身なりをみていう。
「あんたの下男の病はたいしたことはない。しかし、あんた自身があぶないな」
これを聞いた于さんは驚き、わけを聴くと易者はいう。
「あんた手を出してみなさい」
そこで于さんは手を見せた。
「う~ん。こりゃいかんのう」
「ええ?何が?」
「あんた、三日以内を命を落とすかもしれませんぞ」
「そんな馬鹿な」
「うそはいわん」
「ではどうすればいいのかな?」
「わしにいい方法はある。その前に悪いが代金として銀十両くれんかな」
「銀十両?高い」
「そりゃ、そうだろうが。命にはかえられませんぞ。さもないと後悔しても始まらんことになる。それでもいいのかのう。あんたは死ぬのが怖くなのか?」
これを聞いた于さんはむっとなった。実は于さんは、幼いときから怖いものなし。そこで、易者が睨むのを横目で見ながらその場を去っていった。
さて、それから三日たった。かの易者は金のために自分を嚇かしたのだと思ってきた于さんだが、これは何かあるとさとり、その日は宿から出ずにいた。もちろん、下男の病はよくなった。夜になったので于さんは部屋の戸と窓を閉め、明かりをつけて愛用の剣を手に何が起こるのかじっと待っていた。こうして夜半になったが、自分が死ぬような様子はない。そこで下男を先に寝かせ、自分も横になろうとしたとき、不意に窓の外でカサカサという音がする。
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