こうして于さんはかの易者を探しに町に出た。しばらくしてかの易者を町の角で見つけた。こちら易者は眼をきょろきょろさせ、何かを恐れているようであったが、于さんが遠くから自分めがけてくるのを見て、急に逃げ出した。そしてある横丁に入るとふと姿を消した。これをみた于さんが思い出した。
「うん。奴は身隠れの術を心得ているな。そうだ。むかし、わたしの師匠が言っていたな。身隠れの術を破るには、犬の血をそのものにかければ正体を表すとな」
そこで于さんは、自分と一緒に来た人たちにこの横丁のいくつかの出口を塞がせ、自分は狗肉を売る店に行って犬の血を一桶買ってくると、易者が逃げ出しそうだと思う横丁の出口で待っていた。暫くすると目には見えないがものが通る気配がしたので、于さんはさっそくその気配がするほうへ犬の血をぶっ掛けた。するとかの易者が頭から犬の血をかぶった姿を現したので、捕まえようとすると、易者はいくらか武術の心得があるのか、なかなかつかまらない。そこで于さんが得意の技で易者を倒し、やっとのことで捕まえ、眼だけが昨夜のようのぎらぎら光る易者を役所に引っ立てていった。
こうしてみんなの助けもあってこの易者は裁きを受け、まもなく縛り首となった。
で、于さんだが、この町で道草食ったといくらか慌て、下男を連れてそれまで忘れていた都への旅を続けたという。
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