と、ある日、下男はいつものように酒を買ったあと、途中で盗み飲みしていたが、この日はむしょうに飲みたかったのか、いつもより多く飲んでしまった。そしてひょうたんをふってみると、かなりかなる軽くなっている。
「いけねえ!飲みしぎちゃったぞ。これじゃばれちゃうな。どうしよう」と周りを見ると、近くに溝があり、きれいな水が流れていたので、少し考えたあと、なんとその水をひょうたんに入れた。そしてひょうたんを振ってみて「これでわからなくなるように」とつぶやき、趙さんの屋敷に帰った。
で、その日の昼、趙さんがいつものように下男の買ってきたひょうたんの酒を飲んだ。もちろん、下男は水を混ぜたことがばれるのではないかと心配していたが、当の趙さんは「今日の酒はいつものよりうまいな」と下男を褒めた。そこで、下男はこれは助かったと思い、その日から盗み飲む酒の量が多くなり、ひょうたんに混ぜる水も増えた。しかし、趙さんは、酒はうまいうまいというだけ。時には、酒を買ってきた下男の顔が赤いので趙さんは顔をひそめる。が、酒がうまいので黙っている。
この日の昼、趙さんは珍しいつまみで酒を嗜み、とても満足したのでどうしたことかうれしくなり、下男を呼んだ。
「何でございましょうか?旦那さま」
「この酒はうまいのう?いつもの店か?」
「いえ、もと店は酒の味が下がったと聞いたので、町の角のある酒屋に行って買っております」
「うん?そうか。どうじゃ。昼過ぎにわしをその店に連れて行ってくれ。こんなにうまい酒をどうのように造ったのかみたくなったわい」
「え?それは・・」
「うん?どうした」
「その・・あの店は」
「その店へ連れて行けといっておるのじゃ」
これに下男は怖くなり、もともとはずるい人間ではなかったので、いっそのこと、自分が盗み飲みした後、溝の水を混ぜて騙したことを白状した。そして大目玉を食うことを覚悟していると、趙さんは、「あんなにうまい酒は水を混ぜたものだったと?」といって首をかしげた。そして少しも怒らずにいう。
「そうか。そうだったのか。では。今からわしをその溝があるところへ案内しろ」
これを聞いた下男、胸をなでおろし、主人を連れてかの溝に来た、そこで趙さん、この水かと聞き、下男がそうですとこたえたので、さっそく、持ってきたお椀で溝の水をすくって飲んでみたところ、うまい酒の味がする。そこで趙さんは持ってきた大きなひょうたんに溝の水を汲み持ち帰った。
しかし、そのときから、溝の水は甘く感じるものの酒の味はなくなってしまった。そこで、趙さんはこの水を使って酒造りをはじめようと重い、名のある職人を呼んだので、、のちに地元でうまい酒ができた。そしてこの酒は鹿邑(ろの美酒と呼ばれた。はもちろん、趙さんは大金持ちになったという。
そろそろ時間のようです。来週またお会いいたしましょう。
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