「あら、ほんとだね?一体どうしただろうね」と二人が不思議がっていると、そこへ息子がハーハー言いながらやってきた。
「うわー!かあさん、駕籠が速いもんでおいら追いつけなかったよ。あれ?これは庭でなくした鳥かごじゃないか?」
こうして三人は家に入り、明かりを点けてこれまで起きたことを振り返り話し合っていた。
「何がなんだかわからないけど、赤子は無事うまれたし、わたしらも無事で帰ってこられたので、どうでもいいわ」ということになったが、不意に嫁が聞く。
「おかあさん、その家の主とやらに貰った大豆は?」
「そうそう、すっかり忘れていたよ。粒の大きい大豆だよ」とばあさんが懐から赤い小さな包みを出して開けて見ると、入っているは大豆ではなく、なんとぴかぴか光る金の豆であった。
「あれまあ!これはいけない。息子や、速くこれを返しにいっといで」とばあさん。
そこで息子は夜が明けてから、また北山にあるというあの家にいったが、どうしたことかそこには家などはなかった。しかし、ばあさんは人からこんな宝物を貰うのはいやだというので、息子と嫁がその後何回もかの家を探したが見つからない。返す相手が見つからなきゃ、どうにもならないと、ばあさんはやっと返すのを諦めたが、金の豆はそれから箪笥の底にしまわれ、ばあさんもこれまでどおり、銭を取らずに人の病を治し、息子と嫁もこれまでどおり、野良仕事と針仕事を続けて暮らした。そして困った人があれば、ばあさんは人助けにと、かの金の豆を町で崩した小銭を与えたという。こうして息子夫婦にはやがて男の子が産まれ、このばあさん一家四人は幸せに暮らしたという。
え?あの日の夜半の出来事?あれはばあさんが誰にも漏らすなときつく言うので、息子夫婦以外は知ってる人は少なかったとさ!はいおわり!
そろそろ時間のようです。では来週またお会いいたしましょう。
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