「いやいや、わたしらは本当のことを言ってるだけさ」
「よしてくれや」
「ところで、あんた。わたしたちが足腰の病を治す薬を持ってるんだけど、試してみないかい?」
「ええ?足腰の病を治す薬?」
「そう」
「どうして、この見知らずのわしに薬を?」
「いやね。わたしらはお師匠さまに頼まれて、世のためになる人を助けろといわれてね」
「え?世のためになる人って。わしのことかい?」
「ああ。あんたのことだよ」
「そんな。で、お前さんたちの師匠さまって一体誰だい」
「誰でもいいじゃないか」
「でもよ」
「わるいことはしないよ。どうせこれまで医者が見ても治らなかったんだろう?」
「それはそうだが・・」
「じゃあ。今度もだめだったと思ってわたしたちの薬を試してみたら。それに薬代なんかあんたからは取らないよ。そんなことしたらお師匠さまにこらしめられるからな。どうだい?」
「ふーん。それはそうだが」
「いいじゃないか。さ。この袋に薬が入ってるから、早く呑みなさい」
こういって小さな袋を卓上に置くと、二人の者はさっさとどこかへ行ってしまった。
こちら陶俊、いくらか途方にくれたが、じゃあ、今度も治らなかったかと思えばいいと考え袋を開けてみると、黒い二粒の丸薬が入っていた。
「うん?これがその薬か」と、陶俊はあまり考えないことにして、その丸薬を袋に戻し、懐にしまって外をみたが、どうも雨は止んだようだ。そこでさっそく渡し場に戻り、その薬を呑んだ。
すると、不意にめまいがし、足腰が熱くなり、暫くすると足腰の痺れが徐々になくなり、体が軽くなる気がし、どうも力が入ってきたようなので、杖を捨て外に出て歩いてみると、昔のよう自由になり、飛び跳ねてもなんともない。これに驚いた陶俊は「あの二人は誰だろう」とおもい、走ってかの居酒屋に行ったり、町の宿などを回ったりしたが、とうとうあの二人は見つからなかったワイ!!
そろそろ時間のようです。来週またお会いいたしましょう。
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