「母さん、兄さん、二人とも私のためにひどく痩せましたね。いま、私は大きくなり、ここを離れなくてはならなくなりました。三年後にお二人に恩返しに来ます」
これに天亮と母はびっくり。しかし、当の鳳凰は涙を流し、庭に出て、羽を伸ばすと天亮と母の見守る中を空に飛び立っていった。
さて、鳳凰は湖の近くに聳え立つ白雪山の紫微峰に棲んでいて、毎年五月一日の日の出に多くの鳥と共に、一斉に美しい鳴き声を放ち、その鳴き声はここら一帯に伝わった。
これを知った開封府の長官の息子は、ことのいきさつを手下を遣って聞きだし、鳳凰は天亮が卵から孵して育てたものだとうので、手下を連れ天亮の家に来て、銀二千両で鳳凰を譲れと迫った。こちら天亮、そんなことは出来ないと断ったので、長官の息子は腰から剣を抜き、断るのなら殺すぞと脅かしたが、普段はおとなしい天亮、恐れるどころか胸をはり、何を無茶なことを言うと言い返した。これを聞いた長官の息子は「このやつめ、生意気な。ものども!こやつを牢獄にぶち込め!」とつれて来た者どもに命じた。こうして天亮は罪もないのに引き立てられ、開封府の牢獄に入れられた。
そして三年の月日が流れたある日、かの鳳凰は美しい娘となり、母だけを残した天亮の家に現れた。そこで母はこの娘がかの鳳凰が変わったのだと聞き喜んだ。このときから娘は天亮の代わりに一生懸命母の世話をした。
ある日、舌に刺さった骨を天亮に抜いてもらったっかの虎が、天亮の母を脅かしてはならないと人間の姿で天亮の家にきたが、天亮の母から天亮が今でも開封府の牢獄に閉じ込められていることを聞き、かっとなった。
「なんということだ!気がやさしく、罪のない天亮を無理やり牢獄にぶち込むとは!わしが仲間集めて救い出してやる!」
怒った虎は、実はここら一帯の虎の頭であった。すぐに山の頂に上り、大きく吼えると東、西、南と北の山からなんと一度に八百頭あまりの虎が集まってきてた。そこでこの虎は集まってきた虎を率いて開封の町に向かい、その吼える声は天地を揺るがし、道々にものすごいほこりが立ち、これに慄いた家々では、みんなが家に戻り、しっかりと戸を閉めてしまった。
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