こちら開封府では多くの虎がこちらに向かっていると聞いて大慌て。長官はさっそく城門を閉めさせ、護衛の兵を置いた。かの多くの虎を率いてやってきた虎の頭は、開封府の正門が閉まっているのを見て大きく吼え、なんと一飛びして高い城の塀を越えたので、ほかの虎たちもそれに習って屋敷の塀を飛び越え始めた。これに驚いたのが城を守っていた護衛兵たち。手にしていた武器をすてて瞬く間にあちこちに逃げ散っていく。で、不思議なことに、城内に入った虎たちは兵士や庶民には傷つける気はないのか、みんなそろって長官のいる屋敷にむかう。これを聞いた長官はびっくり仰天。
そのうちに虎たちは広い応接間だけでなく、外の庭をも埋め尽くし、それは虎の吼える声で屋敷は揺れ動く。こちら長官は恐ろしさのあまり、はじめは隠れて震えていたが、そのうちに虎たちに見つかってしまい、とうとう応接間に引き出された。
「助けてくれ!一体どういうことなんだ!虎さまたち、食わないでくれ!」と長官は乞う。
そこで虎の頭がいう。
「お前の馬鹿息子がわしの義兄弟の天亮を罪もないのに牢獄にぶち込んだのを知っているか!」
「え?息子が?いや。そんなことはまったく知りません」
「うそつけ!!お前はここの長官として、本来なら民百姓のために尽くすのが当たり前。それをなんだ!悪い息子の悪行を知らん振りしてみているとはけしからん。お前の息子を早く出せ!」
「それは、それは!」
これに怒った虎たちはさっそく奥の部屋で縮み上がっている長官の息子を探し当て、その場で食い殺してしまった。これには長官、腰を抜かした。
虎の頭が言う。
「はやく、牢獄から俺さまの義兄弟である天亮を出してこい!」
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