今月1日から、中国は日本と同じように大型連休,いわゆるゴールデンウィークを過ごしました。その過ごし方も、家族で帰省したり、親戚や友達と食事したり、地方へ出かけたりなどという過ごし方が一般的ですが、ここ数年、北京では、この大型連休の過ごし方に新しい動向が見られました。
五月のゴールデンウィーク前後、北京のスポーツ用品小売店は一年中最も忙しい時期を迎えています。そのうち、北京のスポーツ用品の大手小売店「華唐」もいつもお客でいっぱいです。今年の連休前、華唐を訪れ、楊凱経理に伺ったところによると、去年の大型連休期間中、販売額は普段より10万元(日本円で150万円)増えたとのことです。
「ここ数年間の経験から言うと、連休期間中の売れ行きはいつもより激増します。低価格のスポーツウェアやシューズなどを買いに訪れるのは、大体若い人たちですし、少し高価なテニス用品や、登山用品などを求めてくるのは、収入のよいサラリーマンが多いです。いずれにしても、普段あまりスポーツする時間がなさそうなお客様がこの時期に我々の店に立ち寄る、というケースが多いようですね。お客様はまとめ買い、私たちはまとめ売りできる時期、というわけです。」
では、一般の人たちはどう考えているのでしょう。熊剛さんは外資系企業で働くいわゆる「ホワイトカラー」です。スポーツが何よりも好きという熊さんは、数年前に北京の大手フィットネスクラブ「中体倍力」の会員になり、普段はよくそこに通って、体を鍛えています。しかし5月の連休中そしてその前後は、ジムの利用者がいつもの数倍となり、大混雑するそうです。
「私がここの会員になって今年で3年目になります。収入が増えたので、食事やレジャーだけに使うのはあまり意味がないと思って、フィットネスクラブの会員になりました。かなり高価でしたが、思い切って年間利用カードを買ったのです。しかし大型連休の間は利用者がいっぱいで、トレーニングをするにも行列しなければならない状態です。インストラクターを予約するのも難しくなります。」
年間カードを買っちゃった手前、連休中がこうなってしまうと、なんだか損したような気になるというか・・・ただ、せっかくの連休ですから、別にジムに行かなくてもそのときくらい、外に遊びにいけばいいのに、なんて気もしますけど。
しかし、これまでの中国の連休の過ごし方からしても、こういった考え方は、新しい傾向といってもいいです。実は、熊剛さんの悩みも、スポーツ用品販売店の楊凱経理の喜びも、いずれもある事実、つまりスポーツ関連の消費が中国人の大型連休の主な内容の一つになっているということです。
その一方、逆にいえば、先ほどの熊さんはともかくとして、ほとんどの中国都市部の市民は、日常的に体を動かすのではなく、こういった大型連休になると、突然、集中的にスポーツをする人が多いという傾向もあるようです。
中国国家体育総局のある調査によると、普段から、日常的にスポーツをしている、具体的には(定義:一週間に3日以上、一回で30以上スポーツをしている)いわゆる「スポーツ人口」は40%に達していません。これは、そのほかの先進国に遠く及ばない状態です。
また、このスポーツ人口の内訳を見てみると、お年寄りや学生の割合が非常に高く、それに対して、働き盛りの30代は圧倒的に少ないという傾向が見られました。その世代は一番体を動かせる、また動かすべき世代であるにもかかわらず、仕事が忙しくてスポーツができない・・つまり、収入が安定して、健康志向が高まってきたにも関わらず、その収入を維持するためゆえに、スポーツをしない、という矛盾が起きているわけです。
先ほど、スポーツ用品販売店の楊凱経理の話の中にも、スポーツウェアやスポーツ器具をまとめ買いするのが、ほとんど若者やサラリーマンであるということをお伝えしました。普段あまりスポーツする余裕がなかった彼らは、大型連休期間中、集中的にスポーツを楽しむのが、ここ数年の傾向です。しかし、このようなやり方は、体にあまりよくないと専門家たちは意見を述べています。北京首都体育学院の王凱珍院長の話です。
「普段スポーツをする習慣がないというのは、現在多くの中国人が抱える問題です。特に今のような社会の発展が早い時期、サラリーマンは大きなプレッシャーを受けながら生活しており、ストレスがたまっています。彼らはスポーツから離れてしまうと、非常に非健康的な状態に陥りやすいです。だから、実は、このような人たちにこそ、適度にスポーツをすることを勧めたいです。必ずジムに行かなければならないというわけではありません。自分の体力や状況にあったスポーツを選び、それを続けていくことが大切です。」
もちろん、人それぞれ、ストレスの解消法は異なりますし、別にスポーツをしなければ、そのストレスを解消できないと決まったわけではありませんが、でも、適度に体を動かすというのは、それ自体が、健康維持の最も大切なことですから、それぞれにふさわしいやり方で、体を動かす・・連休だからといって、思い出したようにスポーツをする、というのは、決して利口なやり方ではないのですね。
大型連休中に現れたスポーツ消費の激増は、全体から言うと、人々の健康への要望が反映されたものといえると思いますが、普段、20分間でも、10分間でも、毎日のように歩くなど軽いスポーツを堅持してやることができればよいのではないでしょうか。
これはおそらく、中国に限らず、日本でも、同じことが言えると思います。積極的に体を動かしましょう・・ということですね。(文章:王丹丹 05/07)
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