今月1日まで、豪メルボルンで行われていた第12回世界水泳選手権の飛び込みで、中国のエース、郭晶晶選手は、3メートル飛板飛び込みのシングルスとダブルスの二種目に出場し、他を圧倒して優勝を果たしました。郭晶晶はこれで世界選手権のこの2種目を4連覇したことになります。
中国の飛び込みというのは、いまや世界でナンバーワン、今回の世界選手権でも10種目中9種目で金メダルを獲得しました。そんな飛び込み国家代表チームは、飛び込みにおける「ドリームチーム」とも呼ばれています。そして、郭晶晶は現在、この「ドリームチーム」のエースです。
郭晶晶、1981年、河北省生まれの26歳。身長163センチ、体重49キロです。1992年、飛び込みの国家代表に選ばれ、1998年、当時17歳の郭晶晶は初めて世界選手権に出場し、銀メダルを取りました。2001年に世界水泳選手権の3m飛び板飛び込みで優勝し、世界初制覇。その後、3メートル飛板のシングルとダブルスいずれも4連覇を果たすという快挙を成し遂げたのです。
3メートル飛板シングルの決勝戦が行われた日、メルボルン水上スポーツセンターには、数千人の郭晶晶のファンが殺到しました。この応援の下でプレッシャーは大きかったのかもしれませんが、郭晶晶は安定した演技を見せ、終始1位を守り、危なげなく、優勝を果たしました。この4連覇について、郭晶晶選手に聞きました。
「世界選手権の4度の金メダル獲得はどれも私にとって大切なものです。初めての金も、もちろん忘れがたいのですが、2003年大会はアテネオリンピック前の最後の世界的大会でしたし、中国代表はその大会でいくつか金メダルを逃していましたから、金を取れて、ほっとしたのを覚えています。それから、アテネ後の2005年大会では、まだまだやれることを証明したかったので、ここでの金も嬉しかったですね。そして、今回の大会はまたオリンピック前年ですから、非常に注目されていました。私にとっては、どれもこれも大切な金メダルです。」
このシングルで4連覇を果たした後、郭晶晶はペアの決勝に臨みました。予選一位の成績で決勝に入った郭晶晶・呉敏霞ペアは圧倒的な強さを見せ、2位のドイツペアより37.35ポイント上回り、355.80で金メダルに輝きました。
ということで、これまで世界選手権に5回出場し、金メダル8個、銀メダル1個を獲得、ということになったんですが、実は、郭晶晶は来年の北京オリンピック後に引退する意思を明らかにしており、今回の世界選手権は最後の出場ということになります。この最後の世界選手権について、彼女は次のように話しています。
「世界選手権での自分自身のパフォーマンスについては、非常に満足しています。成績も思い通りのものが残せましたし。悔いは全くありません。何より5度も中国代表として出場できたことに価値があると思っています。」
これまでオリンピックに3度出場、世界選手権に5度出場、飛び込み競技人生の20年で、ここまで頑張ってきた彼女を支えたものはいったい何なのでしょうか。
「辛抱強く、続けることでしょう。長年トレーニングを重ねてきましたから、各段階で必ず困難な時期があるわけです。そんな時に辛抱強く我慢して、その困難を乗り越えることができるかどうかが、アスリートとしてやっていくための鍵だと考えています。試合中の私はあまり、見た感じあまり緊張していないようで、精神的に強いと思われているようですが、実際の私は全く違います。すごく怖いし、臆病な気持ちが出てきそうになるのです。でも、普段からの厳しいトレーニングがあればこそ、その気持ちを自信に変えて、飛び込み台に立つことができるのです。誰よりもよい成績をあげるためには、誰よりも厳しいトレーニングをしなければなりません。疲れることもあります。でも、そんな時あきらめてしまったら、前進できなくなるのです。そのときこそ、我慢のしどころなのです。」
さて、その郭晶晶選手は来年の五輪出場後、引退することを公言しています。その理由についても伺いました。
「オリンピック後にやめる理由はよく聞かれます。でも私にとっては、やめるべきときにやめる、退社する時間になれば家に帰るみたいに自然なことです。中国の飛び込み界では、私は高齢者です。この歳まで続いた選手はあまりいませんから当然のことなんですよ(笑)。」
ところで、郭晶晶にとっては、まだまだ厳しい戦いが終わったわけではありません。来年、祖国で開かれる北京五輪で、是が非でも、100パーセントの確率でメダルを取らなければ許されない・・という非常に大きなプレッシャーの中に彼女はいます。私は個人的に思うのですが、もちろん、年齢的にいっても今回がピーク、最後というのは誰もが理解できることなんですが、今から彼女が引退を口にするのは、やはり来年にかける思い、是が非でも祖国の期待を裏切れないという強い思いを、自分自身へのプレッシャーにするため、あえて、「来年は最後」という言い方をしているような気がします。まあ、どこを見渡してみても、彼女を越える選手は他の国にも、自国にもいないわけですから、普通に考えれば、金メダルは間違いないのですが、ただ、あとは自分との戦いを繰り広げながら、来年を迎える・・その厳しい道のりを我々ファンも見守っていきたいと思います。(文章:王丹丹 04/09)
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