2600年前、ローマ帝国は、征服者として、古代オリンピックをギリシャから奪い取った。そして1960年の、ローマ五輪のスタジアムには、平和と友情を象徴するオリンピック聖火が燃え続けた。同じローマで行われたこの2回のオリンピックはまさに「雲泥の差」である。

　第17回の誘致に動いたのは、イタリアのローマ、ギリシアのアテネ、ベルギーのブリュッセル、アルゼンチンのブエノスアイレスなどの15都市。最後に、イタリアのローマが開催権を得た。

　1908年、ローマは第4回大会の開催権を得たものの不景気のため開催できず、ロンドンに譲った。1924年から、ローマは3度誘致に動いたが、成功せずに終わっただけに、今回の大会はローマの人々にとって、喜びもひろしお。ハイレベルな大会にしようと全国民が一致協力した。

　大会は、1960年8月25日から9月11日まで行われ、17競技の150種目が設けられた。83ヶ国や地域の5348人（女子610人）が参加。モロッコ、チュニジア、スーダン、サンマリノが初出場。東ドイツと西ドイツが「ドイツ連合」として出場、トリニダードとジャマイカが「西インド連合」を結成して出場。選手の数は「ドイツ連合」の293人を筆頭に、アメリカの292人、旧ソ連の284人と続く。

　聖火の火種がギリシアの古代五輪の遺跡から採取され、ギリシアのランナーにアテネまで伝えられた。そして、そこで盛大な儀式を行った後、船でイタリアに運ばれた。さらにイタリア全土を経由して、ローマに到達したのである。

　総じて言えば、ローマ大会が高いレベルの大会だ。世界記録は30回更新。大会記録も76個出た。

　男子の陸上、十0種競技で、中国台湾出身の楊伝広が銀メダルを獲得。これは、今大会の陸上におけるアジア選手が取った唯一のメダルで、中国人第一号の銀メダルとなった。

　35ヶ国の69名の選手が出場したマラソンで、エセルトビアのビキラが強豪を破って、優勝した。初めてのアフリカ出身の金メダリストになった。

　総メダル数では、旧ソ連が金43個、銀29個、銅29で、アメリカを大きく上回り、ランキング1位。イタリアは、アメリカに次ぐ3位で、これは、イタリアにとって、史上最高となった。

　ＩＯＣ・国際五輪組織委員会の少数の委員が「二つの中国」の政策を堅持したことから、中国五輪組織委員会が1958年8月19日、ＩＯＣからの脱退を宣言した。1979年10月、中国大陸が再びＩＯＣに復帰したが、大陸の選手の姿が五輪の会場に再び現れたのは、1984年のロサンゼルス大会まで待たなければならない。

　台湾は、この大会に47人の選手を派遣。陸上、サッカー、バスケット、水泳、ボクシング、射撃に出場している。

　今大会の自転車競技で、デンマークのジェンセン選手が突然死をした。後の解剖で原因は薬物だと判明した。彼の死は、世界のスポーツ界に大きな波紋を呼んだ。この事件以後、ＩＯＣは「反ドービング活動」に力を入れ始める。