銭祝慧(日産自動車 法務室課長)
1969年中国北京生まれ。91年中国政法大学法学部卒業後、北京市海淀区司法局勤務、「北京日報」法政部記者、法律コラム執筆者を兼務。法律コラム優秀作者賞受賞。92年中国弁護士資格取得後、北京市海淀弁護士事務所に入所。94年に来日し、98年慶応義塾大学法学修士号取得。NEC法務部主任を経て、現在、日産自動車株式会社で法務室課長を務める。日本新華僑華人会広報部長、在日中国弁護士聯合会理事、在日中国科学技術者聯盟副会長を兼任。
張:となると、日本で法律を勉強していたときも、ギャップが大きくて大変だったのではないですか。
銭:その通りです。日本での社会経験が乏しいから、スンナリと事例が頭に入ってきませんでした。ですから、大学では大学院の授業を受けながら、学部の授業も受けていました。そうすることで、少しでもギャップを埋めようとしたわけです。
張:ところで、日本企業が中国に進出する場合、どういったことに注意すべきなのでしょうか。
銭:多くの日本企業は中国のことを理解せずに、進出しています。ある程度の法律を知っていても、慣習的な部分にまで理解がおよんでいないケースが多いようです。たしかに最近の中国の経済成長は目覚しいものがあります。と同時に、法整備も急速に進んでいます。ですが、法律を制定しても、実際にそれを守る人たちの意識が変わるまでには、まだまだ時間を要するはずです。そのあたりについても認識しておく必要があります。 勉強意欲とボランティア精神が 日中交流活動の原動力に
張:ところで、銭さんは在日中国科学技術者聯盟(ACSEJ)というボランティア団体で副会長を務めていますが、最初はどういった経緯で入会することになったのですか。
銭:私が在日中国科学技術者聯盟に入会したのは95年のことです。日本語学校で勉強していた頃でした。当時、在日中国科学技術者聯盟は分科会を頻繁に開催しており、そのたびに勉強会を開いていました。ちょうど日本で法律以外の勉強もしたいと思っていたので、積極的に参加するようになりました。また、在日中国科学技術者聯盟には当時で約500名、現在は約1500名の会員が所属しています。こういった人たちと交流を深めることができるのも、大きな意味がありました。というのは、法律に関わっている以上、色々な業種のことを知らなければならないからです。さまざまな人の立場を知っていれば、たんに法的リスクを指摘するだけでなく、「こうすればリスクを避けられる」というソリューションを提案することができるのです。
張:在日中国科学者技術者聯盟での活動についてお話しください。
銭:在日中国科学者技術者聯盟は在日中国科学技術者と中国や日本の関連団体、企業、学者の交流を促進することを目的とした団体です。03年に開催された「10周年記念大会」には約350名が参加し、大盛況をおさめました。また、この大会をキッカケにより日中関係に踏み込んだ活動をするようになりました。たとえば、川崎市と連携しはじめたのもこの頃からです。そして、04年からは、中国大使館や川崎市と協力して、毎年「東京論壇」というイベントを開催しています。日中関係についてのテーマで、講演やシンポジウムなどを行い、参加者には勉強、商談、異業種交流の場として活用してもらっています。中国各地経済開発区の関係者、中国企業、在日中国人、日本企業などが参加しています。今年は月刊「コロンブス」の古川猛編集長にコーディネーターを務めていただいて、日本と中国の中小企業をテーマに開催しました(本誌26頁参照)。そのおかげか、今年は嬉しいことに日本からの参加企業が増えていました。07年には第9回「世界華商大会」が日本で開催されるので、東京論壇をより一層盛大なものにしたいと考えています。
張:中国企業の反応はどうですか。
銭:毎回、中国からもさまざまな地域から参加しています。たとえば、新疆や甘粛、モンゴルなどからの参加者もいました。彼らにとっては、滅多にこういう機会はありません。ですから、非常に喜ばれています。これからも努力して、こういった人たちと日本の自治体や企業をつないでいきたいと思います。それが自然と日中友好につながれば最高ですね。 張:大手企業の社員とボランティア団体の職員という2足のワラジで、おおいに日中両国のために頑張ってください。ありがとうございました。
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