「現代中国映画上映会」は、1973年の発足以来、延べ500本を超える作品を上映、その総来場者数は7万人にものぼる。フリーパス会員になれば8000円の会費で1年間に上映される15本ほどの作品を鑑賞できる。中国映画ファンに感動を与え続ける「現中映」。それを支えるスタッフを取材した。(http://www1.parkcity.ne.jp/gentyuei/)
毎月送られてくる「現代中国映画上映会」の案内メール。そこに掲載されるサイトを開くと、公開予定の作品に関する情報が丁寧に紹介されている。読み進めるとこの上映会は、社会人や学生のボランティアによって33年も続いているという。「毎週土曜日の夕方、事務所に集まっていますので覗いてみて下さい」ーー、この一文につられ、早速訪ねてみることにした。
水道橋駅近くの細い坂道を上がったところに事務所はあった。中に入るとすでに今夜の上映会用の会報やチラシの折り込み作業中である。メンバーについて尋ねると「大学生の頃からよね」と二人の社会人が顔を見合わせる。ここでの作業は20年を越えているだろう。中国文学を学ぶ現役女子大生もいた。
メンバーは少数精鋭だ。配給元などと交渉してフィルムを借り、時には日本語字幕まで自分たちで作る。作品の紹介文にも心を砕いていて、主演俳優や監督は勿論のこと、制作会社や脚本など基本データをきちんと記す。会場の手配に、会員への案内状の発送・・・。上映会で観客が得る感動は、スタッフの途切れることのない地道な作業に支えられているのだ。「好きなことに理由はありませんよ」、そう口にしながら、黙々とチラシをダンボール箱に詰めてゆく。
夕方6時半、文京区にあるシビックホール(小)に赴いて驚いた。何と入り口に200人ほどの観客が大蛇の列をなしていている。やっとのことで中に入ると、さっき事務所にいたスタッフが受付や販売員、アナウンスに早代わりして、水を得た魚のように働いていた。
この日の上映は、レスリー・チャン(張國榮)が出演の「追憶の上海」。パンフレットを眺めながら、ふとさっきのスタッフの話を思い出す。これまで一番感動したのは、少し前上映した張國榮出演の作品だったと。その日は日本での最終上映ということもあり、レスリーに思い入れのあるファンがかけつけていた。物語が幕を閉じてエンドロールになると、会場から感動の拍手が沸き起こったのだ。上映仕掛け人冥利につきる一時であったろう。
発足当時、日本ではまだ数少なかった「中国映画の鑑賞の場」を提供してきた上映会。時代が変わった今では、商業ベースからもれながらも質の高い作品を発掘し、スクリーンにかける努力を重ねている。運営はすべて無報酬のスタッフ。どこからも人的、財政的支援を受けていない。日中国交正常化の翌年の1973年以降、一月たりとも休むことなく上映を続けている。(文責:満永 いずみ)
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