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日本で活躍する中国人・劉忱
   2006-05-24 15:02:27    cri

 劉忱・西安ソフトウェアパーク日本事務所長

 古代中国の13代王朝の都がおかれていた西安に、中国政府のテコ入れで、ソフト開発の基地「西安ソフトウェアパーク」が設立されました。劉忱氏は、この「西安ソフトウェアパーク」日本駐在事務所の所長をつとめています。西安へ日本企業を誘致しようと意欲を燃やしている劉さんを取材しました。

 取材に当たったのは、張国清・北京放送東京支局長です。この取材内容は日本東方通信社の編纂による週間雑誌「コロンブス」2005年12月号に掲載されています。

 豊富な人材が武器

 張国清:中国政府は、内陸部の「西部大開発」を最重要事項に掲げていますね。

 劉忱:ですから、これからは、西安を含む内陸部にそのトレンドになります。

 今年はシルクロードブームの再燃もあって、多くの日本人観光客が西安を訪れています。観光都市のイメージが強いですが、実は科学技術力総合力は北京、上海についで第3位の実力を持っており、ソフトウェア産業はきわめて盛んです。

 張:中国人でもそのことを知らない人がけっこういます。劉忱さんは、西安生まれなのでしょうか。

 劉:私は北京生まれで、ハルビン工業大学(黒竜江省ハルビン市)卒ですから、西安はおろか、日本にも特別な関係があったわけではありません。が、NECの関連会社に就職した時から日本とかかわりができました。その関連会社は半導体事業を手掛けており、私は7年間在籍しました。その間、93年に研修生として初来日し、半導体設備の研修を受けました。

 この時、チームワークを組んで、一つの仕事に立ち向かっていく日本人の仕事ぶりに感動しました。また、当時の上司が「人間はかならず間違いをするものだが、大事なことはどこで間違ったのかを確認して、再び同じ過ちを犯さないことだ」という言葉が今でも心に残っています。

 NECでは、たくさんのことを学びましたが、大きな組織のなかでは、中々自分の思い描いていることができないと思い、独立することにしました。98年に再来日し、仲間に呼びかけて8人でソフト開発の「株式会社ソフトロード」(東京都港区)を設立したのです。

 その設立メンバーの中に偶然、西安出身の人がいて、西安市政府の訪日団が来日した時に、彼が紹介してくれたのです。その後、西安市政府から「日本と西安を結ぶ窓口になってもらえないだろうか」といわれ西安ソフトウェアパーク日本事務所長のオファーがきたのです。

 張:なるほど。それでは、西安ソフトウェアパークは、西安市政府の管轄下にあるのでしょうか。

 劉:本来なら西安市人民政府の高新区(高新技術産業開発区)に属するものですが、同時に中国政府の情報産業部(日本の経済産業省に相当)の管轄下にもあり、「国家ソフトウェア産業基地」のひとつになっています。それだけ重要度が高いのです。

 私が日本事務所長を引き受けた理由は、二つあります。一つは、沿岸地域に続いて、今後は内陸部の開発が本格的に進むということ。もう一つは、西安には大学の数が多く、西安交通大学や西北工業大学など一流大学を含めて100校もあります。大学生の数が約60万人に達し、優秀な人材が揃っていることも経済発展の大きな要素だと考えたのです。

 日本事務所長としての仕事は、日本企業を西安に誘致することと、西安の優良企業を日本に紹介して、日本企業から仕事を発注してもらうことです。投資誘致とオフショア開発(注)のセミナーもこれまで15回開き、西安の投資環境とオフショア開発ノウハウについて説明してきました。

 張:なるほど。では、西安に進出しているソフト開発関係の日本企業はどのくらいあるのですか。

 劉:総企業数は中国企業、外国企業合わせて530社で、このうち、日本企業は10数社です。NECや富士通といった大企業が、積極的に進出しています。

 張:しかし、中小企業が進出するチャンスはないのですか。

 劉:もちろん、その仕組みもあります。中国でビジネスをしたいという中小企業はドンドン相談に来てほしいです。

 現地法人をスムーズに設立できるように手続きのお手伝いもしますし、設立後は、所得税が免除されたり、開発した製品の輸出関税が免除されるなどの優遇措置が全国どこでも受けられますが、西安ソフトウェアパークは中国のソフトウェア輸出基地ですので、手続まで大変簡略化され、インフラも整えております。

 また、進出しなくても、中国で「オフショア開発」をすれば低コストでソフトウェアを開発することができます。この「オフショア開発」のアドバイスなら当事務所におまかせください。得意分野ですから。反響も多く、対応しきれないときもあるほどです。

 日本ソフト市場の問題点

 張:実際に西安ソフトウェアパークに進出した日本企業はどのような評価や感想をもっているのでしょうか。

 劉:大学の数が多く、現地で優秀な人材が確保しやすいことが喜ばれています。また、西安は内陸部という土地柄のお陰で、北京や上海などに比べて人材の流動性が少ないのが特徴です。沿海部なら、ソフト業界で3年以上勤める中国人社員はホントウに少ないです。その上、沿岸地域よりコストが低いことも大きなメリットです。

 張:劉さんは、日本の生活も長く、日中両国の状況を理解しています。日本のソフト市場の問題点についてお聞かせください。

 劉:アメリカの例でいうなら、大手企業のIBMがソフト市場で占める割合はたった数?にすぎません。残りは中小・ベンチャー企業が活躍しています。ところが、日本のソフト市場は、富士通、日立、NEC、日本IBMといった大手企業が市場の8割を占めているおり、ほとんどの会社は下請けとして仕事をもらっているという状況です。

 最近は、大手からの発注金額も減ってきていますから、中小ソフト企業の経営は苦しくなるばかりです。これからは大企業の下請けとしてコツコツやるだけではなく、独自のやり方で開発を進めなければ生き残りが難しくなると思います。

 張:だからこそ、積極的に西安ソフトウェアパークを活用して、事業を伸ばしてほしいですね。

 劉:日本の中小企業は、優れた設計力を持っているのですから、もっと自信を持つべきです。彼らの進出は西安の地元企業にとってもプラスになります。

 私は司馬遼太郎の『竜馬がゆく』が愛読書なのですが、日本にはすばらしい歴史があるじゃないですか。日中間の歴史認識には、諸問題がありますが、自国の歴史を見つめなおしてほしいですね。中国人の心情を理解しながらビジネスをすすめればきっとうまくいくはずです。

 張:日本の中小企業にとって勇気の出る言葉だと思います。今後ますますのご活躍をお祈りします。ありがとうございました。

 劉忱(りゅう・しん )

 1969年北京生まれ。1991年、ハルビン工業大学精密機器学部光学儀器学科卒。その後、NEC関連の半導体製造企業「首鋼日電電子有限公司」に入社。93年研修生として初来日、98年退職。再来日して、01年9月にソフト開発の「株式会社ソフトロード」(東京都港区)を設立、副社長に就任。03年「西安ソフトウェアパーク日本事務所」を設立、所長に就任。

 西安の投資環境

 かつての長安で、秦、前漢、後漢、唐、隋など中国13王朝の都がおかれていた古都。市内は史跡が豊富で、秦の始皇帝が眠る「秦始皇陵」と「兵馬俑」のほか、唐の玄宗皇帝と楊貴妃が楽しんだ温泉「華清池」、三蔵法師ゆかりの「興教寺」などもある。また、シルクロードの起点であり、近年、西安を訪れる日本人観光客数は急増している。

 西北部地域最大の工業都市として、改革開放後は急速に近代化が進められている。科学技術の研究がさかんで、実用化に向けた研究開発も行われている。海外からの投資件数も年々増加しており、「開発区」には米国、日本、ドイツなどのグローバル企業が製造拠点を設けている。業種は機械、食品、電子、通信、環境関連など。外資による直接投資のプロジェクト数は2000年末までの統計で、2162項目に及び、総投資金額は71億5700万米ドル(8445億2600万円)に達している。

 オフショア開発

 システム開発・運用管理などを海外の事業者や海外子会社に委託すること。日本企業のオフショア開発先として、中国のほか、インド、ベトナムなどがある。

kokusei
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