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潭柘寺の塔 | たった1本の柿の木が、千年以上にわたって北京第一の聖地である潭柘寺の墓地に、光彩を与えている。高くそびえる枝は、つややかな色の柿の実をたわわに実らせ、ある仏塔の頂きを抱いているかに見える。
「塔林」と呼ばれる墓地は、寺院を下った山腹の平らな場所にある。しかし、寺を訪れる人のほとんどは、迂回して本堂に向かう道をとるため、その場所を見逃してしまう。そこは大体いつもひと気がないが、座るのにちょうどよい大きな石がたくさんあり、私は1980年代に家族と一緒によくそこへピクニックに出かけた。90年代には、そこは我家の犬を自由に駆け回らせるとびきりの場所だった。しかし、それほど頻繁に出かけてくつろぎながら、私が初めてある特別な仏塔に気づいたのは、2000年の秋、色鮮やかな柿の実に惹かれたときだった。
鳥たちが熟れた柿の実をつつき、半分食いちぎられた実が、五重塔の灰色の磚の上につぶれて散らばっていた。仏塔の正面に「第33代住持無初徳始禅師之塔」の銘がある。前面の風化した標示が興味深いものだった。私は、柿の木のもとに埋葬された僧正の身元を確認して仰天した。この僧は、実は日本人だったのだ。銘文にはこう記されている。
「明代(1368~1644)初期に中国に来たこの僧の日本名は『無初徳始』といい、また修行僧時代は『終級』と呼ばれていた。彼は日本の、当時は信州と呼ばれていた現在の長野県出身であり、幼くして僧坊に入った」
ーー「人民中国」より 歴史学者 阿南・ヴァージニア・史代=文・写真
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