私が日本に来たいきさつは他の留学生とはちょっと違いまして、留学生として日本に来たわけではなく、客員研究員として来ました。中国で大学院修士号を取得して、それから総合研究開発機構という、当時の日本政府経済企画庁の外郭団体から客員研究者として招待を受けたのです。
そのため、他の留学生は日本に来て日本社会の底辺をよく見ているという長所がありますが、私はむしろ各方面の研究者、学者と交流するという環境の中で。最初の数年間は勉強に打ち込むことができました。日本に留学して誰か一人の指導教官について勉強したわけではない分を、当時の日本の本屋に並んでいた中国関係の本の著者を片っ端から一人一人尋ねていって、彼ら全員から学ぶという荒業ができたので、自分にとって相当いい勉強になったのではないかと今では思っております。
日本に来た当初は見るもの全てが新鮮で、日本社会と中国社会、文字や顔の形、生活習慣など見た目では似たところはありますけれども。中に入れば入るほど、二つの社会は違うものであるということを実感しました。関連して、中国の日本語授業で先生がおっしゃった。 「中国人にとって日本語は3日も勉強すれば半分わかる。しかし3年勉強しても半分しか分からない」という、日本語と中国語の違いについての譬えが思い出されました。つまり、互いに見た目で似ているものが多いので相手が分かるというような気持ちになりやすいのですが、本当は、表面上似ているものの裏には、二つの民族のかなり異なった歴史の発展と思考方法という背景があるので、先入観を持って相手を見ると往々として間違いを起こしてしまいがちだということです。真の相互理解というものは、双方とも本国固有の物事の見方と思考方法を捨てて、相手の民族の歴史や文化や考え方に対する真剣な理解、勉強から始めるべきだということを私は日本に来てから強く感じました。
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