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中日ビジネスの最前線から~2017年の中国経済 実務家の展望

2016-12-23 14:21:00     cri    
 「中国経済減速」のニュースが日本で多く報じられる中、2017年の中国経済はどうなるのかとよく聞かれます。確かに中国経済は高度経済成長時代が終わり、2015年のGDP成長率は6.9%にまで下がりました。これをもって「景気減速」、「先行き不安」と判断している人もいるようです。

 だが、現場でコミュニケーションをしている者から言わせてもらうと、中国の成長率が現在のレベルにまで落ち着くのは、高い成長率を維持していた数年前からずっと言われており、また政府としてもそのようにしていくと明言していたため、全く驚くに値しません。政府や専門家が予測して言い続けていたことを「景気減速」と評価するのはいかがなものでしょうか。

 では、2017年の中国経済はどうなるのか。一つはっきりしているのは、GDP成長率は6.5%前後を維持するということです。国内・国際経済の動向に不透明感が広がる中、なぜそう断言できるのか、無責任ではないかと言われる人もいるかもしれません。 

 しかし、根拠はあります。それは中国政府が2020年までに小康社会を作り上げ、一人当たりGDPを2010年比で倍増するという国家目標を設定していることです。中国はこの国民との約束を果たすため、6.5%前後の成長を実現しなければならない宿命を背負っているのであり、たとえどんなことがあっても必ず達成します。よって、6.5%前後の成長率を維持できるのかという問題設定はそもそも生産的ではありません。むしろバブルを発生させ、あるいは環境を犠牲にして成長を図るのか、そうせずとも実体の伴う環境にやさしい発展を達成できるのかに注目すべきです。幸い、高度経済成長から中高速成長へギアチェンジしたことにより、以前よりは実のある発展に注力できる環境が整いつつあると筆者は見ています。

 成長を維持する主要な手段として、中国は今後も引き続き規制緩和、貿易振興、サービス業発展による個人消費拡大等、一連の政策を打つと見られます。これらが有効に機能している間は国有企業改革や人員整理、生産能力調整、在庫処分等、経済をステップアップさせるための措置に力を入れるでしょう。これらの方針の副作用により景気減速が目立つようになれば、副次的手段として不動産開発や地下鉄・空港等のインフラ建設を政府が許可し、公共投資による景気の下支えを行うと見られます。この主要手段と副次手段のバランスがどうなるかに注目すれば、2017年のみならず今後数年の中国経済をある程度見通すことができるでしょう。

 過剰生産で生じた在庫や国有企業改革でリストラにあった人員にどのように対応するのかも注目点です。サービス業の発展によって吸収することも考えているようですが、「一帯一路戦略」とリンクした消費財、生産設備、労務の輸出がより活発化すると思われます。

 対外的なことに目を向ければ、2015年のデータで中国の対米直接投資額が米国の対中直接投資額を超えました。政治的、経済的要因により、この差の拡大・縮小・再逆転があるのかが注目され、中国経済のみならず、世界経済の先行きを図る上でも大切な要素になるでしょう。また、中国は対外開放を今後も拡大するであろうが、自らが発展の重点と位置付けるサービス業分野の外資への開放がとりわけ注目されます。映像、エンタメ、SNS等の制限はなお厳しく、外資参入が非常に難しいです。外国企業にとってはこの分野での開放度が中国経済・社会の成熟度を測る重要な指標であり、より一層の緩和の実現を期待したいです。

 いずれにせよ、中国の経済が一定の量的拡大を維持しつつ、質的向上を達成していくのは世界にとっても非常に重要なことであり、今後の動きを注視していきたいです。(作者:泉川友樹 日本国際貿易促進協会職員)

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