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野村総研:中国のITサービスに関するイノベーションが既に世界最先端

2016-03-14 11:13:17     cri    
 中国経済の世界に対する影響力は極めて大きいため、中国の経済成長の鈍化が世界で大きな注目を集めている。今中国経済に必要なことは、新たな成長を生み出す供給力を生みだしていくことであろう。またそのためには、特定産業における生産設備の過剰解消や合併再編等による過当競争防止、というような荒治療も果敢にやり遂げていかなければならない。今後の中国経済の成長の源泉は、「投資効率の改善」と「労働生産性の向上」であろう。投資効率の改善とは、過当競争による重複投資の防止や非効率投資の改善である。中国は、道路や鉄道などのインフラ整備や生活環境改善、環境汚染防止などの公共インフラ投資分野においてはまだまだ投資すべき対象が多く残されており、投資は今後も経済成長の動力のひとつにしていくことができる。一方の労働生産性向上については、現在の中国にはまだ向上する余地が大きい。まず中国全体平均で見れば労働生産性の絶対値がまだ低い。また勤労者の第1次産業から第2次、3次産業への移転は今後も進むし、IT化による生産や業務の効率化、企業経営の高度化なども確実に労働生産性を向上させていくことができる。しかしさらに持続的に経済成長していくために重要な要因がある。それは製品やサービスのイノベーション促進である。 イノベーションには、「技術的イノベーション」とビジネスモデルなどの「ソフト的イノベーション」があるが、どちらも商品の付加価値を不連続的に高められるものである。イノベーションが起こると、当然労働生産性の数値も上昇し、経済成長の大きなかつ持続的な動力になる。

 中国は「創新」と名づけるイノベーションを国家戦略として推し進めており、ターゲットを定めた分野に巨額の投資も行ってきている。また中国政府は国民の起業を推奨し、そのための政策的な後押しも積極的に行っている。事実、中国ではITサービス分野に関しては、アリババやテンセントを先導役としてイノベーションが絶え間なく生み出されており、この分野では既に世界最先端レベルにある。日本企業のイノベーション力の向上は、1960~80年代における日本の高度経済成長と軌を一にする。この時期、日本は官民が協力し総力を挙げて産業分野の研究開発に投資を行った。経済の持続的成長のためには、技術イノベーションの推進による国際競争力強化が不可欠であると考えていたからである。

 日本の研究開発がイノベーションを生みかつ高度経済発展に貢献した理由は、主に以下の2つである。第一は、研究開発の主体が企業側にあったことである。高度経済成長時代の日本の研究開発費の75%は民間企業によるものであり、政府から民間企業への研究開発支援は2%にも満たなかった。当時はアメリカでも研究開発資金の30%は政府が拠出していたので、1980年代の日本の研究開発費に占める政府の拠出割合は、主要先進工業国の中では最も低かった。第二は、日本の研究開発力向上のために中小企業の貢献も大きかったことである。1970年代の企業の研究開発比率(売上高に占める研究開発費の割合)は全体で1.5%程度であったが、中小企業による研究開発比率も大企業とほぼ変わらないレベルにあった。だから日本には、今でも中小企業が生み出した先端技術が多く存在する。 1980年代以降は大企業がさらに研究開発比率を拡大して現在の研究開発比率は3~4%にまで増大しているが、研究開発に力を入れる中小企業でも2%台を保っている。また日本には中小企業を中心とした「技術サービス業」が発達していることにも注目すべきである。筆者自身も大学で修士論文を作成した時、複雑な実験機器を考案し組み立ててくれるサービス企業に多大な支援を受けたことが記憶にある。

 日本の研究開発は過去も現在も常に民間主体であるため、市場の状況に極めて敏感でビジネス的に成功を収める確率が高い。また業界団体を中心に技術や技術者のデータベースが整備されており、これは各研究者の技術評価力を大いにサポートしている。またあまり強調されないことであるが、日本は研究開発の物理的環境が優れていることも重要な視点だ。日本の大学や企業の研究施設は、機器類のメンテナンスがきちんと行われ、清潔に秩序よく保たれているため測定誤差等が起こりにくい。

 中国が技術イノベーションを促進し、それを経済成長の動力にしていくためには、日本の経験は参考になると思う。つまりイノベーションの促進のために資金力はもちろん必要だが、それ以外の要因、例えば市場ニーズに対する感度や周辺の技術サービス業の発展など、資金以外の重要な要因が多くあるということである。イノベーションは政府と企業の適切な役割分担により生み出されるのである。(文:松野豊。清華大学・野村総研中国研究センター理事、副センター長。)

 「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年3月12日

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