日本でいえば、東京の銀座に例えられる「王府井(ワンフーチン)」。「銀ブラ」ならぬ「王(ワン)ブラ」は北京っ子にとって大きな楽しみのようだ。
王府井は北京でもナンバーワンのビジネス街であり、中国はもとより世界中の企業が収まったビルが軒を連ね、外資企業の幹部や資産家の入居する高層マンションが聳えている。
歩行者天国の王府井大街には、新旧の大型デパート、老舗のホテルやレストラン、おしゃれなブティックや専門店、路地のような屋台横丁、更にはエキゾチックな教会、銀座の時計店のように大きな時計を掲げた建物もある。近くに故宮の甍も望めるほどの一等地で、斬新さと伝統的な気分が同居した、そぞろ歩きにはもってこいの空間だ。そんな王府井でショッピングをし、レストランで食事をすることは、豊かな中国を実感し、ある種のステータスまで感じることになるのかも知れない。
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ところが、その王府井が今は「王ブラしてグルメ」などとのんきなことは言っていられないありさまだ。6月半ばの日曜日、久々に出かけてみて驚いた。あのきれいな歩行者天国が掘り返され、沿道のデパートや商店の前のあちこちがフェンスで覆われて、工事が行われていたのである。
オリンピックまで1年あまりとなり、今、北京の町は、街なかの建物や住宅団地はもとより、文化財の建物や道路や公園や花壇など、至る所で工事が行われ、いよいよ最後の追い込みに入っている。それが本格的な夏を迎えて、暑いのとうるさいのと埃っぽいのとで、いわば三重苦のようである。
正直言って、王府井よお前もかという気分だった。内外から、何十万人あるいは何百万人という大勢の客を迎えるのだから、最高の北京を見せたいという気持ちは分かる。分かるが、今までのままでも、王府井は、世界の何処と比べても遜色のない、美しく広々とした、北京を代表する場所として、私の目には映っていた。オリンピックに向けて、これ以上何を求めているのだろう。それともオリンピックとは関係なく、必要に迫られた工事なのだろうか。
このように考えながら、改めて周囲を見てみると、何故ここでこんな工事をしているのだろうと思えるようなものも見えてくる。わが住まいの近くの道路では、縁石の取替えや歩道の敷石の張り替えをしている。分離帯の樹木を取替えたり新しい樹を植えたりしている。花壇の花木を入れ替えている。これまでの縁石や敷石が特に痛んでいたとも思えないし、樹木や花が整っていなかったとも思えないのだ。
オリンピックや万国博など、国際的な大イベントも、出来るだけ環境保護に努めながら、省エネ、省資源でやっていこうというのが世界的な流れであり、また、それを実践しなければ開催そのものも認められない時代である。工事にも、やるべきものとやらなくても良いものがあると思うのだがどうだろうか。
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王府井でグルメとばかりに出かけたレストラン「金銭豹」は、世界中の料理をバイキング形式で自由に堪能できるというもので、ランチタイムは180元(2700円位)、ディナータイムは220元(3300円位)。北京ではなかなか結構な値段だと思うのだが、日曜日でもあり、1000人収容できるというホールはごった返していた。賑やかさが豊かな中国を象徴しているようでもある。
刺身やら寿司やらフォアグラやら鱶鰭スープやら楽しんだのだが、好きな料理を取る列に並びながら、なんだか外の工事がレストランの中まで延長しているような気分になったのも事実であった。
(写真、文 満尾巧)
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