瑠璃廠大通りは、北京の南側にある有名な文化街で、その歴史は清の時代まで遡ることができます。当時、今の大学入学試験に当たる科挙(隋代から始まった官吏登用試験)を受けるため、地方から上京してきた挙人(地方で選抜試験を受けて、科挙の入試資格を獲得した人たち)の多くが瑠璃廠の辺りに泊まっていたことから、ここに書店と文房具店がだんだん多くなり、瑠璃廠は文化的な雰囲気に満ちた街になりました。
また、瑠璃廠の繁栄は中国の「四庫全書」という史書の編纂ともかかわっています。乾隆帝の時に、この史書を編集するため、上京した大勢の文人が前門辺りに泊まっていました。前門に近い瑠璃廠辺りは、これらの文人たちが話し合い、書籍を交換する絶好の場所となっていました。彼らはここで歴史のことを研究し、史料を調べたりしていました。これに気づいた賢い本屋さんが次から次へと瑠璃廠で書店を開くようになりました。
書店のほかに、骨董品や書画それに陶磁器、玉の工芸品などを販売する商人たちもだんだんここへ集まってきました。清朝の末期に、瑠璃廠で売られている骨董品は幅広く、殷時代の竹簡と甲骨から、商・周時代の銅製の鼎や魏・晋時代の仏像、宋・元時代の肖像画と山水画などまで、多種多様でした。ほとんどの店舗にはここならではの「宝物」が所蔵されており、ぼろぼろの小さな店舗でも、紫禁城の故宮に所蔵されている国宝に匹敵する珍品が売られていたそうです。今日の瑠璃廠では、世間を驚かせるような高価な骨董品はもう見つかりませんが、おみやげの店に並んでいる磁器の瓶、玉碗、陶製の馬と銅の鏡などを楽しみながら、200年前の文人墨客が酒を汲み詩を詠い合う風景を想像するのもなかなか快いことでしょう。
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