チベットは中国西南部の青海チベット高原にあり、日本の3倍以上の面積で122万平方キロ、平均海抜が4000メートルを超えることから、「世界の屋根」とか「南極と北極のほか、地球の第三極」と言われています。
青海チベット鉄道は、青海省の省都西寧からチベットのラサまで、総延長1956キロの鉄道を指します。西寧からゴルムドまでの814キロの区間は、1979年に既に鉄道が敷設され、1984年から正式に運行が始まりました。ゴルムドからラサまでの総延長1142キロの区間は2004年の10月12日に敷設工事が終わり、2006年の7月1日に正式運営がスタートしました。
青海チベット鉄道の歴史は半世紀前、1955年まで遡ることができます。この鉄道を敷設するため、国は大規模な調査測量を三回実施しました。一回目は1955年から1961年まで断続的に行われ、前後を通じて三ヶ月間かかりました。二回目の調査は1974年から始まり、4年間。三回目の調査は1996年から2001年まで5年間にわたって行われ、合わせて1000人以上の作業員がかかわったということです。

青海チベット鉄道の建設にかかわった作業員達は三大ルールを守らなければなりません。1、機械でできることは人力ではやらない。2、平地でできることは高原ではやらない。3、山麓でできることは頂ではやらない。
青海チベット鉄道は、崑崙(クンルン)山脈、唐古拉(タングラ)山脈、念青唐古拉(ニェンチェンタングラ)山脈という三大山脈を乗り越え、果てなく広がるゴビ砂漠と、雪に覆われたヒマラヤ山脈や広大な草原とを結びつけました。ゴルムドからラサまでの間には45の駅があり、海抜4000メートル以上の区間は960キロに達します。
ゴルムド周辺には塩分の多い塩湖やアルカリ干潟がたくさんあり、チャルハン塩湖があることから「塩湖城」と呼ばれています。
朝7時20分にゴルムドを出発した列車は、凡そ2時間走ると、「野生動物のパラダイス」と呼ばれる可可西里(ココシリ)を通過します。チベットカモシカの生息地で有名なココシリはもともとモンゴル語の「麗しい少女」という意味で、多くの河川が縦横に流れ、雪山、峡谷、石林、塩湖、氷河などが独特の景観を作り出しています。

この列車に乗りながら、揚子江や黄河などの水源地である「三江源」自然保護区の美しい眺めを楽しむこともできます。牛や羊が青い空と白い雲の下で、青々とした草をゆっくり食べている姿も見られます。鉄道沿線では、野生ヤクやチベットカモシカ、チベット野生ロバ、モウコガゼル(野ヒツジ)などの希少な野生動物に遭遇することもあります。
登山愛好家の憧れの的、雪をいただいた玉珠峰は、崑崙山口(クンルン峠)にそびえています。「神の湖」と呼ばれる、水も空も青一色の美しい錯那(ツォナ)湖も車窓から望むことができます。
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