11月4日(土)、晩秋の暖かい日差しの中で、北京市内の広葉樹が一斉に葉を落とし始めました。胡桃の木の下では、市民が落ちた実を拾い集めています。そんな様子に思い立って、北京市西部の郊外にある北京植物園に出かけてみました。紅葉で知られる香山の麓に広がる植物園です。
外に出ると市街地を吹きぬける風は思いの外強く、しかも冷たく、色づいたイチョウなどの街路樹の葉を激しく震わせています。これは日本で言う「木枯らし1号」かもしれないと思いながら、植物園に向かいました。北京の市街地はほとんど坂のない平らな土地にビルや石造りの建物が続きますが、北京植物園の辺りまで来ますと、緑濃く、山並みが間近に迫って来ます。
広々とした植物園の中を歩いていると、何かほっとした懐かしいような気分になって来ます。これは単に緑が多いからではなく、園内の地形に起伏があって、背景にある山並みと合わせて、日本で見慣れた風景に似ているからだと気がつきました。東京などの都市郊外の公園にでもいるような気分になってくるのです。
1956年、中国国務院によって建設された北京植物園には、1万種類150万株の様々な植物があり、植物に関する研究や教育のための拠点となっています。園内は種類ごとに大きく区域が分けられ、樹木園、水生植物園、桃園、牡丹園、芍薬園、竹園、宿根花卉園、楊柳区、熱帯植物温室区などがあります。桃園にある桃の種類は世界で最も多く、春の「北京桃花節」には数十万人が来園観賞すると、案内板には書かれていました。桃に人気が集まるのはいかにも中国らしいところですね。この他、広い園内には、池や山間の渓流などを設けた自然教育区、大きな釈迦の涅槃像が安置された臥仏寺や清代の有名な長編小説「紅楼夢」の作者、曹雪芹の記念館のある名勝古跡区もあり、子供から大人まで幅広く楽しめそうです。
さて、11月初めの園内は、近くの香山で紅葉見物をする人が多かったようで、ここはさほどの人出はなく、ゆったりと見て回ることが出来ました。晩秋の日差しは柔らかいのですが、木枯らしを思わせる風が強く、紅葉もやや盛りを過ぎて、急いで葉を落としていくようでした。園内には、イチョウなど葉が黄色くなる木々が多く、日本の紅葉ほど彩り豊かではありません。それでも、秋の日を浴びた木々は鮮やかで、若い人たちやカメラ愛好家たちがあちこちでシャッターを押していました。
北京にいながら異国であることを忘れさせてくれる自然景観、日本ならごく身近に見られる風景、そんな居心地の良さに魅かれて、また出かけることになりそうな北京植物園でした。(撮影、文 満尾巧)
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