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大鐘寺青空骨董市
   2006-10-16 11:24:12    cri

   

 旅の楽しさは、未知の土地の自然や文化財を目の当たりにすることもさることながら、その土地の人々と心の交流を図ることに大きな魅力があるといえます。増して、旅する土地が外国であるならば、そこの人々の暮らしや考え方に接することができるのはこの上ない喜びです。

 北京の街を歩いていますと、道端に品物を並べて通りすがりの人を相手に商いをする多くの人々に出会います。扱われる品物も実に様々で、野菜、果物などの食料品から衣料などの日用雑貨品、書籍、手作りの玩具、カメ、ウサギ、リスなどのペット類、貴金属類、骨董品、映画DVD、果物の切り売り、包子や串焼きなどのファーストフード、更には食べ物なのか何かの道具なのかよくわからないものまであり、中には、どこの遺跡で掘り出したのか、泥の着いた得体の知れない品物をたった一つだけ自分の目の前に置いて、うずくまったまま買い手が声をかけるのを待っている人もいます。

 街を歩けばどこでも見かける路上の商いですが、実は禁止されていることでもあるようで、こうした人たちが時折、公安係の姿を見つけてそそくさと品物を片付け、公安係が去っていくと何事もなかったかのようにまた元の場所で店開きする場面を何回か見ましたし、公安係がこうした人たちを追い払っている様子も目撃したことがあります。何を問題にして公安が取り締まるのか良く分かりませんが、そんなことにめげるような庶民ではありませんし、公安もある程度大目に見ているように思われます。

   

 北京郊外から野菜や果物を積んだ荷車を馬に引かせて運んできて、馬を荷車につないだまま商いをする農家の人もいます。この夏は、こうして運ばれてきたスイカや桃に随分お世話になりました。夕方、持ち込んだ品物がすっかり売れて身軽になった荷馬車が、交通渋滞の車列を尻目に蹄の音も軽快に夕陽を浴びながら家路を急ぐ姿を何度も目にしました。こんな時、荷車に乗った人も引く馬も晴れ晴れと輝いて見えたものです。

 こうした、路上に並べられた商品を仲立ちにして、土地の人たちと片言のコミュニケーションを取るのも、外国を旅する大きな楽しみの一つではないでしょうか。今回ご紹介するのは、そんな路上の商いの極めつけともいえる骨董品の青空市です。

   

 北京市の中心部から北西にやや外れた場所に、明時代の大鐘で知られる「大鐘寺」があります。寺の門前や周囲には古ぼけた小さな店が並び、書画、仏像、彫刻、発掘品、玉、石、硯、装身具、コイン、陶磁器、香炉、喫煙具など、いわゆる骨董品に分類されそうなありとあらゆるものが並べられている他、寺の隣には高級品を扱う専門店ばかりが入った大型の建物もあります。

 大鐘寺青空骨董市は大鐘寺から50メートルほど離れた駐車場のような空き地で行われていて、40ー50の露店が所狭しと品物を並べています。博物館に陳列されていてもおかしくないような立派なものから、興味のない人にはガラクタにしか見えないようなもの、更には使い方も眺め方も分からないようなものまで、見ているだけでも飽きない様々なものがあります。

   

 私がここを訪ねた日はちょうど国慶節の連休期間中ということもあって、結構賑わっていました。ここを訪ねたのは4度目で、これまでは、こんな閑古鳥で商売になるのかなあといった感じでしたが、この日はお年寄りや親子連れなど、意外な程客が集まっていました。こうした骨董品を売っている場所は、注意して見ると北京市内のあちこちにあり、それが北京市民の骨董品好き、古いもの好きをよく物語っていると思います。

 ここで最大の楽しみとちょっとしたスリルを味わえるのが、値切り交渉と言えるでしょう。目ぼしいものを見つけたら、並んだ品物の向こうで胡散臭そうな眼でこちらを見ているおじさんやおばさんにいきなり尋ねます。

 「多少銭(いくら)?」「??○×○×○×……○!」「什?(なに)?」

 ほとんど通じないのですが、やり合っているうちに、なんとなく向こうの言っている値段が分かってきます。この時に、相手の言い値で買ってはいけません。よく聞く話ですが、北京では相手の言い値の3分の1位が相場ということです。50元と言われたら、20元位が落し所というところでしょう。

 折り合いが付かず、「不要(いらない)」といって立ち去ろうとすると、必ず後を追ってきます。そして再交渉に入るわけですが、それでも折り合いが付かず、ものわかれに終わることもしばしばです。結局、駆け引きの末買った(買わされた)ものが高かったか安かったかは買い手の心一つです。

 今、私の手元にあるのは、1個150元と言われ、こちらが「80元なら買う」と言い、粘った末に、「それなら売らない。別のと合わせて2個150元なら売る」と言われ、やむを得ず手に入れた香炉です。

 気に入ったものを納得の値段で手に入れ、しかも、駆け引きを通じて地元の人とささやかなコミュニケーションを楽しめる。不要なら、断固として断ればよいのです。ちょっとしたスリルとともに味わえる喜びは、これこそ旅の醍醐味といえるかもしれません。気をつけたいのは、中には文化財的な価値のあるものも出ていることがあって、空港で没収されてしまうこともないとは言えないそうです。あまり高価なものには手を出さないほうが無難といったところでしょうか。(撮影、文 満尾 巧)

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