北京の后海地区は、洒落たバーが立ち並び、夜の人気スポットとして定着しました。もうひとつ、3里屯にもバー街がありますが、こちらはより値段が安いため、中国の若者たちもたくさん集まってきます。昼の人力車による胡同巡りとともに、外国人にも楽しめるところです。
ここに「九門小ち(「ち」は口へんに「乞」)」という軽食レストランが7月に店開きしました。3ヶ月が過ぎて、賑わいは上々、昼時か客でごったがえしています。場所は宋慶齢の旧居の北西、孝友胡同の一角です。小ちとは、一口で食べられる軽い食事といったところでしょうか。北京っ子は大好きです。
実は四合院を改造してできたこの店は、庶民の町、前門にありました。ところが、20008年の北京五輪を控え、北京市はあちこちの街区の改造、修理に着手。前門もそのあおりを受け、ほとんどの店が立ち退きを余儀なくされたのです。店仕舞いの日、前門の小ちには、長い人の列ができました。「伝統の味が消えるのは寂しい」「北京の歴史がなくなる」。そんな声が多くよせられました。
こうした声に押され、11店が一度はずした店の看板を持って集まってきたのです。老北京伝統小ち協会などがバックアップしました。臓物の煮込みが売り物のマさんの店「爆肚馮」、腸の煮込みの陳さんの店「小腸陳」などみんな健在です。馮さんは「北京には昔、宣武門、前門、和平門,朝陽門などの門がありました。この門の名前を食べる部屋の名前につけたんです。九つの部屋があるので、『九門小ち』となづけました」といいます。
一皿は10元から15元くらい。夜10時半までの営業ですが、売り切れになるところもあります。「小ちを食べるのは、おなかを満たすだけではないんです。焼餅を食べ、豆汁を飲むと子供時代の思い出が蘇ってくるんです」と老北京伝統料理協会長の候嘉さんはいいます。老北京の雰囲気を、ぜひここで味わってください。(文章:吉田 写真:斉鵬)
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