ワールドカップに熱中
4年に1度のサッカーワールドカップ(1)が6月9日に始まりました。今回の開催地は北京から飛行機で約10時間で、往復料金が12000人民元(日本円で16万円相当)に達し、それに時差は6時間もあるドイツ(2)です。多くの中国人のサッカーファンにとっては、ドイツのスタジアムに座って、観戦できるような経済的なゆとりはありません。それに、7月9日までの一ヶ月間に行われる今回の試合は、ほとんどが北京時間の夜9時頃から翌朝の3時ごろまでの時間帯です。暑さでだるさを感じはじめる今のシーズン、この世界的なカーニバル(3)に仲間入りするため、睡眠時間を1日3、4時間に絞るのは大きな試練(4)のようです。
でも、熱心なファンたちは(5)、どんな困難でも乗り越えよう(6)としています。現場へ行けなくても平気です。中央テレビ局・CCTVがすべての試合を生中継(7)しているので、家でも全部見られます。レストランやバー(8)でプロジェクター(9)で大きく写した場面を観戦するのも最高の気分です。さらに、200平方米の専用広場でマルチスクリーンを設置している所もあります。そこで、知人や見知らぬファンと一緒にビールを飲みながら観戦するより大きな楽しみはあるでしょうか。
サッカーに夢中だといっても社会人としての責任を忘れてはいけません。仕事があるので、まず社長のところへ 行って、ワールドカップ期間中一ヶ月間の勤務や仕事の進め方について大目に見てもらえるようにお願いする人もいます。一番理想的なのは休暇をもらえることですが、もしこの両方ともだめならば、あっさり仕事を辞めてしまう(10)若者も少なくないということです。こうした若者にとっては就職難など、気にするところではなさそうです。また、こんな話もあります。中国でもトップレベルの歌手の一人が、この一ヶ月間、舞台に立つのを止めると決めたそうです。「どうせ皆ワールドカップを見て、僕の舞台を見てくれる人がいないし、僕もサッカーを観戦するから」というのが口実になっています。
今回も中国チームがワールドカップ本大会への出場を果たさなかった上、夜中に観戦しなければならない事情があっても、ファンたちがサッカーに寄せる情熱を冷ますことはありません。韓国、日本、オーストラリア(11)、イラン(12)などはアジアを代表しています。彼らのゴール(13)は自分たちのゴールと同じで、中国のファンは歓声を上げて乾杯します。彼らの敗戦は自分たちの敗戦で、「やはり西洋人の方が体格的に大きいからたまらない」と、大きなため息が漏れます。このほか、中国と関わりの深いパラグアイ(14)やセルビアモンテネグロ(15)にも熱い声援を送ります。パラグアイ代表には、かつて中国のサッカーリーグで活躍した選手がいますし、今の中国サッカーリーグには、セルビアモンテネグロ出身の選手がいるからです。中国と同じ発展途上国からのチームにも関心が寄せられています。
サッカーに夢中になっているのは男性だけではありません。家庭を守る奥さんたちは、今まではワールドカップ期間中、「サッカー未亡人」(16)と呼ばれるほどでしたが、今年は違うようです。「主人を解放して、自分なりにサッカーを楽しもう」とネットで呼びかける奥さんもいれば、若い女性たちの中には出場国の国旗や国花をボディーペインティング(17)で、体に描いて「サッカーベビー」(18)と呼ばれる人たちもいます。また、ベッカム(19)やロナウド(20)、マラドーナ(21)などのアイドルを追っかける女性も少なくありません。
また、メディアは最も格好いい四字熟語を選手たちに送っています。「鯉の体のそり返し」(22)、「大きく羽ばたく鵬」(23)、「逆さまにかけたかぎ」(24)などがあります。日本の方はそれぞれの表現に、どんなプレーと動作が当てはまるか分かりますか。
サッカーのワールドカップ期間中、最も美しいものは、純金で作られたチャンピオントロフィー「ワールドカップ」(25)と言えるでしょう。国際市場で金が値上がりしているので、今年のワールドカップトロフィーは史上最高値になっているとのことです。サッカーのワールドカップ、まさに魔法の杖(26)のような存在です。
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