アジア大会の取材のため、(1)ドーハへ行っていたスタッフは、500グラムの棗や、(2)ナッツ類のミックスのお土産を持ってきてくれました。紫がかった棗は、大きさが3センチぐらいで、白い箱に並べられて詰められていました。中国より少し厚めの感じの袋に入った(3)落花生、(4)アーモンド、炒った(5)カボチャの種なども、新鮮さとともに親しみを感じさせました。時差6時間という遠い地域からのお土産に親しみを感じたのは、初めてです。
箱を包んでいる(6)ラップを取って、みんなは好奇心半分で棗を食べました。中国の棗より、肉が厚く、味も甘いです。(7)「おいしい、おいしい」と感心する声が上がる中、結婚したばかりの3人の女性スタッフに対して、「棗を食べて、早く子供を作るのよ」という冗談も飛び交っていました。というのは、中国では、(8)語呂合わせとして、「棗」は「早」と同じなので、結婚の場を飾るものとしてよく使われ、子供が早く授かるようにという意味が含まれています。このことから、棗は中国では(9)縁起のいいものとされ、親しまれています。また、(10)血液のめぐりにもよく、出産に良い栄養食品として特に女性に勧められています。このほか、漢方薬の効きめを引き出す(11)副薬としてもよく使われています。
私は、「向こうの人たちはどんな思いで食べているかな」と食べながら思いました。そこで、放送局で仕事をしている(12)エジプトからの専門家を尋ねました。(13)アラビア語のスタッフに通訳をしてもらいながら、話を聞きました。その結果、アラブの世界では、棗は欠かせないものであることが分かりました。棗は体内の糖分や(14)カロリーを保ってくれるものとされ、イスラム教徒が断食をする月・(15)ラマダーンの期間中、朝晩の栄養を補充するものとして、棗はミルクに入れて食べられ、人々にスタミナを供給するということです。さらに、普段の暮らしでは、出産にいいともされていますが、中国と違って男性に進められているそうです。
落花生は、バザールでは自由に買えるほど、ごく普通の食べものですが、中国のように、蒸したり、上げたり、炒ったりするのではなく、生のまま食べるのが一般的だと教えてくれました。そして、カボチャの種も食べますが、主にサラダ油にすると話してくれました。こうしたことから、中国での暮らしは、馴染みやすく、しょっちゅうスーパーで、棗、落下生、カボチャの種を買って、家族そろって楽しむことで、古里の食べ物の恋しさも和らいでいると、微笑みながら話してくれました。
棗は中国を原産地とする種類が多く、その栽培地は山西、山東を始め、北京の周辺から西部の新疆まで広いです。一方、落花生とカボチャは、(16)コロンブスが新大陸を発見して初めて、原産地のアメリカ大陸から中国へ伝わってきました。これらは、同じ時期に今の西アジアにも伝わったのでしょうか。
遠くかけ離れていても、同じものを食べ、そして、そのものに似たような思いを込めています。ドーハからのお土産、時間と地域が交錯しているような不思議な感じを与えてくれました。
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