秋は収穫の季節です。多くの種類の(1)果物が店頭に並べられ、食欲を誘っています。スイカをはじめ、(2)桃、(3)リンゴ、(4)葡萄、(5)石榴(ざくろ)、(6)竜眼(桂圓)などが多く見られるようになっています。果物は、水分が多く、甘みが十分であれば、それだけで(7)おいしいと思うのが当たり前ですが、その果物にまつわるエピソードなどに思いを馳せながら食べると、味も一段とアップしてきます。中国では、多くの果物に縁起のいい意味をつけているからです。
桃の木は、伝説によりますと、(8)崑崙山に住む女神・「西母娘娘」の庭に茂っている木で、実った桃は千年かかって熟すものもあれば、三千年かかって熟すものもあります。さらに、9千年かかってやっと熟すものまであります。ですから、これらの桃は「長寿の桃」といわれ、食べると長生きできるということです。それだけではなく、しなやかな音楽が流れ、宮殿のような空間が広がる天上の(9)極楽まで昇ることもできます。孫悟空が西母娘娘の庭でこの桃を食べ、大暴れをしたのでした。「西母娘娘」の伝説からでしょうか、桃は中国では(10)長寿不老をもたらす縁起のいい果物とされています。誕生日を祝うときに、ケーキを桃の形にする人も少なくありません。また、スーパーでは、小麦粉で作った高さ20センチ、直径10センチぐらいの桃の飾り・(11)「寿桃」も良く見かけます。これは、特に、年配の人の誕生日を祝うときに欠かせないものになっています。もし皆さんが中国にいらっしゃったとき、年配の人の誕生日にこの「寿桃」をプレゼントすると、とても喜ばれます。
石榴もあります。これは遠い昔に西域から伝わってきた果物です。中国では西安(長安)周辺で盛んに(12)栽培されています。北京でも、庭やキャンパスなどでよく植えられています。これも縁起のいい果物とされているのは、その赤い実がぎっしり並ぶことにあります。果物の実の「実」は中国語では「子」と発音し、語呂合わせとして、子供の子になり、石榴には「子供をたくさん持って、「子孫繁栄」という意味が託されるようになりました。昔は「子供が多ければ、幸せが一杯入ってくる」とされ、その気持ちが石榴に込められました。石榴を食べたり、石榴が描かれた絵を家に飾ったりして、夢がかなうように祈ったのです。
このほか、ナツメ(棗)、落花生、竜眼もあります。ナツメ(棗)は中国語では早いという意味の「早」と同じなので、早起きをして勉強や仕事に励むという意味で、北京の伝統的な建築様式である「四合院」の庭によく植えられています。そして、ナツメは落花生の「生」、竜眼(桂圓)の発音の「圓」と共に、新郎新婦に早く子供ができるように、という意味の言葉、(13)「早生貴子」の語呂合わせにもなっており、新婚家庭を祝福する縁起物ともなっています。
果物をただの果物として食べるだけでなく、こうした意味を思いながら食べると、おいしさが一段と増してくるのではないでしょうか。
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