9月の新学期が始まると、息子は中学校に進学(1)します。8月初めに中学校から、20日から26日まで合宿して(2)軍事訓練を行うという知らせ(3)が届きました。「場所は、車で2時間ぐらいの万里の長城の近くです。持ち物(4)は、布団(5)、食器、下着、お湯を入れるボトル、紫外線防止クリーム、痒み止めの清涼油などを揃えなさい。スナック菓子(6)などの食べ物の持参は禁止します」と、通知書に書かれていました。仕事を終えて帰宅した夕方から持ち物の準備にかかりましたが、4時間ぐらいかかってしまい、夜中にやっと完成しました。「ご飯が美味しくなければどうしよう、蚊に刺されて(7)脳炎にかかったらどうしよう」と、ぶつぶつ言いながら、息子はうろうろしていました。
集合時間の翌朝7時半、150人ぐらいの新入生たちが自分で荷物を持って、キャンパスに集まりました。同じ迷彩服を着て、宿営地へのバスに乗るこれらの子供たちの多くは、今回初めて一人で一週間を過ごすかもしれません。中国では、物質的に恵まれ、苦労を知らない子供のことを、「ビニールハウスの中の花」(8)に喩えていますが、これらの子供たちは、まさにそのとおりです。その代わり、忍耐力、思いやり、困難を乗り越えようとする意欲(9)などに欠けていると言われています。
一週間は私にとっては長かったです。こちらから電話を掛けられないばかりか、向こうから掛けてくることもできませんでした。「怪我なんかしなかったかな、ホームシックになって(10)泣いてはいないかな」と、150センチぐらいの息子のことが、心配でたまりませんでした。
軍事訓練が終わる日、学校まで出迎えると、息子はずいぶん日に焼けていました(11)。顔から首、腕、足まで、真っ黒でした。でも、胸を張って(12)立ち、案外元気そうでした。「どうでした?」と聞いたら、枯れた声で(13)、「楽しかったよ」と返事してくれました。毎日、「勉強に努め、訓練に励み、緩みなく努力し、中華を振興しよう」というスローガンを一日100回ぐらいも大声で唱えたためだと、話が続きました。家に着くと、歩調、しゃがみ、起立、腕立て伏せ(14)のほか、軍隊体育拳法などを、披露しながら紹介してくれました。そして、我が家で一週間ぶりに揃って取る夕食の時、喜ばしいことがありました。今までと違って、息子は大口で美味しそうにご飯とおかずを取ってくれるのです。「二分以内に食事を終わらせないとだめだったよ」と、頬を膨らませながら言いました。夕食の後は、「布団の畳み方も習ったよ。見て」と言いながら、息子は、布団を広げ、三つ折りして、「お豆腐のように、折り目正しくするのが大事だよ、と教官が教えてくれた」と、布団の四隅を確認していました。
四隅をきちんとが張るため、まめまめしく畳んでいる息子の姿を見て、中学生になる節目に、弱弱しい「花」たちは少しでも丈夫になってくれたかな思いました。高校進学と大学入学の時も軍事訓練があるので、「そのときも、頑張ってね」と言うと、息子は大きく頷いてくれました(15)。
|